後日談:アキバ系

 
 
「アイオンさん!」
「ミラーさん!」
日本の秋葉原駅で、再会した二人はガシっと抱き合う。

「あれってBLっていうか男相手のリア充?」
「ああ、そうだよ。でもそういうのはブクロ系だよなぁ」
と通りすがりの人々が言い交わしていく。

そんなことはまったく気にならない二人。

「僕、一度アキバに来てみたかったんだ。なるべく怪しいところにね!」
「僕もです。日本にいるのなら、ここに来るのが男の使命と言うものでしょう」
二人ともそれなりに目立つ容姿をしていたが、まわりはコスプレだと思って何も気にしていない様子だ。

「ああ、あんなところに理想のお嫁さんがいます!」
アイオンが指差す方向にはメイド服を着た女性がいた。
「あれが、日本人の考える理想のお嫁さんなんだねぇ~」
ミラーもにっこりとする。

アイオンは早速メイドさんに声をかけた。
「いつも心がけていることはなんですか?」
「え?可愛らしくいることかなぁ?」
メイドさんは答えた。よく見ると喉仏が見える。
男の娘というやつだ。
だが、アイオンは感心したように頷いた。

「では、僕も真祐のために可愛らしくいなくては」
「アイオンさんはいつでも可愛らしいと思うよ。僕は、それにほんのちょっぴり危険だし。理想のお嫁さんじゃないかな?」
「ミラーさん!!」
アイオンは瞳をウルウルさせながら、ミラーの手を取った。
「本当に僕は理想にかなっているでしょうか!」
「うんうん。今度、真祐くんの部屋に炭酸を加えてみるといいよ!」
「はい、ぜひともそうします!」
待っていてください!真祐!より刺激的な毎日が送れます。
ガッツポーズのアイオンを見て、ミラーも嬉しそうだ。

二人は、歩き出した。
ごく普通にコスプレの人が歩いている。

「こっちこっち!」
ミラーがいう方向へ進んでいくと、細い路地だった。
電気のコードらしきものがたくさん下がっている。
「僕はアニメも好きなんだけど、機械類も好きなんだ」
まことに小さい店が並んでいるが、そこに売られているものはマニアックなものばかりだ。
機械に詳しくなければ、何がなんだかわからない。

「僕もこれを買います。カーテンを止めるのにちょうどいい」

用途不明のランプがついた電線を手にとって、アイオンは店員に差し出した。
アイオンは機械に詳しかった・・・が、見事なディスプレイぶりにこれらをインテリアとして使おうと考えたらしい。

「さすが、アイオンさん!目の付け所が違う!じゃあ、僕はこれを」
ミラーも電線のようなものを手にする。
「お風呂にちょうどいいくらいの電気を流したら楽しそうじゃないかなぁ?僕はお風呂って退屈で嫌いなんだよね。これで、退屈しなくなるし、兄さんの肩こりも治るかも!」
「それはいい考えです」

もし、この場にジャンと真祐がいたら二人を殴り飛ばした後、引っ越すかもしれなかった。



細い通りを出て、大通りを歩いていると、やはりメイド服の女性に声をかけられた。
「メイド喫茶だって。真祐くんに接する方法を学べるかもしれないよ」
ミラーがそういうので、二人はメイド喫茶に入った。

「おかえりなさいませーご主人様!」

「いやぁそれほどの者でも~。頭が高い。控えおろう!」
意味不明なことを言いながら、ミラーは椅子につく。
「これが理想のお嫁さんの世界・・・」
アイオンはさっそくメモを取り出した。

席につくと、
「ご主人様、何をお召し上がりになりますか?」
メイドが声をかけてきた。
「僕は刺激的な一品を」
「僕は・・・ご主人様が喜びそうなものを」
アイオンの発言に首をかしげたメイドだったが、「ご主人様にお喜びいただけるように、あたしがんばります!」
と注文を取った。

ミラーには「炭酸入りメイドの命がけジュース」
アイオンには「愛情たっぷりこってりお汁粉」

二人は、嬉しそうに乾杯をして、それぞれのメニューを楽しんだ。
ミラーの炭酸入りジュースは炭酸がきつく、途中で目を回したが、それでも満足したらしい。
アイオンのこってりお汁粉は、お汁粉というより、餡子をかけた餅といったところだったが、
「これはアボカドで代用できるかもしれません」
と感想を述べた。

メイドさんたちにメイドの心得をたっぷり伝授してもらった後、アニメのグッズを見たりしているうちにすっかり日が暮れてしまった。

萌え系イラスト付きの紙袋を持った二人は、秋葉原の駅に戻ってきた。

「ああ、楽しかった~」
「本当に、ここは勉強になります」

「じゃあ、またね。僕すぐに帰るよ。実は有明のほうに飛行機を停めてるから」
「有名なコミケの場所ですね。では、僕も真祐に今日のことを話伝えます」

「「Good Luck!」」
ハイタッチの後、すんなりと二手に分かれた。

ミラーは来ようとすればいつでも自家用ジェットで日本にやってくるし、連絡先は交換済みだ。
これからも楽しい交際は続くだろう。





「おかえりなさいませ、ご主人様!」
「馬鹿っ!!誰かに見られたらどうするんだ!」
ピンクのフリフリエプロンで玄関前に待っていたアイオンを部屋に押し込めて、真祐はアイオンから土産物をもらった。
アニメの絵が描いてある食品が多い。中にはラーメン缶とか微妙なものも含まれていたが、市販のものなので、味はそう悪くなかった。
だが、問題は土産物ではなく、アイオンの新たに学んだらしい認識のほうで、次の日起きるとカーテンに謎の電線がぶら下がっていて、風呂に入ろうとしたら、コードの一部が入っていた。

「オレを感電死させる気かっ!!」
「肩こりにいいと聞きました。ミラーさんもお兄さんのためを思ってそうするんだそうです」
「ジャン・・・」

一歩間違うともう二度と会えないかもしれない・・・。
慌てて、アメリカのジャンに連絡を取ることに。

「大丈夫か!?」
ジャンの一声がそれだった。
「あやうく殺されかけた!」
「ミラーにはきつく説教しておくから、アイオンの説得は任せた」
「ああ」

そうして、振り返るとアイオンが立っていた。
ボンベを持って。

「僕たちの倦怠期脱出のために、炭酸を加えてみようと思います!これでより刺激的な毎日が・・・」
アイオンを捻じ伏せて、ボンベを取り上げた後、真祐は本気で山奥に土地を買うことを検討しはじめた。
兄のように、月までいかなくても、どこか…安く安全な土地があるだろう。
少なくとも今よりは。

早速、ネットで検索し始めた真祐だった。