-ピンク色の旋風5-


「おまえは、スキュラ族と人間とどっちで生きたい?」

あの時、初めて突きつけられた選択。
今まで、そんなこと考えたこともなかった。
だいたい、オレが宇宙人ハーフだと知ったのは、去年の話だ。
生まれてこの方、出来の悪い方の人間として生きてきた。
いきなり、人類の上に立つとか言われても実感がぜんぜんわいてこない。

オレは、もし・・・どんなに頭がよくなっても変わらないだろう。
一回も頭がよくなったためしがないので、絶対とはいえないけど。

オレは思う。
人類の上に立ちたいと思っている奴は、頭がよかろうが悪かろうが、人類の上に立つことが目標なのだ。
オレは…渡辺智恵は・・・、この日本の中で、それなりに真面目に普通の暮らしがしたいデス!
そして、いつまでも春人と仲良くしていたい。
それ以上は、望まない。
というか、それ以上を想像したこともない。

こんなもんでいいんじゃないんだろうか?




春人が帰ってくる日。
それは、RQとの別れの朝でもある。

空港にて。
先ほどから、RQはオレの旋毛のへんをずっと見つめている。

「なんだよ??」
「いや、まぁ・・・これで愛しい智恵ともお別れか・・・と思うと、泣けてきた」

どうみても、ニヤついているぞ、RQ・・・。

「あ、もしかして!あれ春人だ!おーい!!」

ゲートから出てくる人の中に赤茶けた髪が見えた。

春人は、こちらを確認して、苦虫をつぶしたような表情で近づいてくる。

「よぉ。会いたくなかったぜ」
「オレは、会いたかったぜぇ春人っ!!!」

なぜかRQが泣き崩れながら春人に腕を伸ばす。

「うっ!!おまえに会いたくなかったんだ!」
「智恵が、毎晩おまえの名前を呼びながら身もだえするんで、ついつい添い寝しちまったんだ」
「そ、そんなことしてないだろっ!!」
たしかに・・・まぁ、目を覚ましたら全裸のRQがいたけど(悪夢)。
「きさまっーー!!またそんな変態行為をオレの智恵にっ!!」
「オレの智恵ときたもんだ!はははは~~」

殴りかかる春人をさらりとかわして、RQはその肩をがしっと抱いた。

「うっ、やめろよ!」
「ちょっと話がある」

力ずくで、春人を連れ去ったRQ。

二人は、なにやら真剣に2、3言交わして、こちらへ来た。
いや、RQはそのままゲートへ向かっていく。

「RQ!!」
「じゃあな、また近いうちに」
「え?」

ピンクの髪がさらりと一陣の風に吹かれた。
どこからか、花びらが飛び込んできてあたりに舞う。
なんて、ピンクが似合う男なんだ!
最初は、すっごく変だと思っていたけど、いや、今でもそうとう変だとは思っているけど、でも・・・・ピンクが似合うというのは嘘じゃない。

「なんていうか・・・ありがとう!」
「ああ。あとは春人にまかせておけ!」

春人のほうを振り返ってみると、驚いた顔でこちらを見ている。
もう一度、RQのほうを見ると、もうその背中は小さくなっていた。

「智恵っ!!」
「はひ?!なに、なんだよ、春人!」
「あいつにまさか・・・変な行為をされたんじゃないだろうな!」

春人がずいっと迫ってきた。
やっぱり、春人は美人だ。
RQもまぁかっこいい部類だろうけど、やっぱり春人が一番だ。

「RQの裸より、春人の海パンのほうがいい。だから、大丈夫!」
「は???智恵、おまえ・・・本当に大丈夫なのか?!」
「だから、大丈夫だって。あいつがすっぽんぽんで隣にいても大丈夫だった」
「ぜ、ぜんぜん大丈夫じゃないだろ!!くそっ~~~あの変態め!次にあったらもう一度頬骨砕いてやる!」

「それより・・・学校で」
「ああ、聞いた。あいつがすぐに連絡よこしたよ」
「うん」

RQ。ああ見えても、一応、ちゃんと仕事していたらしい。

「学校で校長が洗脳されたって。敵の正体は不明か・・・」
「・・ん~よくわからないけど、そんな感じかな??」

オレは、あの時のことを思い出した。

―やはり、奴がらみか―

RQが、たしかそんなことを言った気がする。
敵の正体を知らなかったとは思えない。
でも・・・・、本当は知らなかったのかも??

うーんうーんと考えているオレの眼前に、春人は掌を差し出した。

「あいつが、これを」

ルビーのような色石が光っている。

「使いこなせ、できなければ、おまえを守れないって。あいつが言っていた。
智恵、なにかわかるかこれ?」
「え?それって??」

校長先生の身体からRQが取り出した石に似ている。
でも・・・あれはもっと溶岩みたいなごつごつしたもので、溶岩のような禍々しい光を放っていた。こんなに澄んだ美しい紅色ではなかったはずだ。

「ごめん、オレにはそれがなんだかわからない」

似ているけど、たぶん同じものじゃない。
オレの中でも、この石がなんだか検討がつかなかった。

春人は、その石を睨み付けるように見つめて言った。

「これ、昔見たものに似ているんだ・・・。でも、まさかあいつがこれを持っているわけが」

そうして、首を一度振った。

「そんなわけねぇな」


赤い石をかばんにしまいこんで、春人はオレの肩に手を置いた。

「ともかく、いろんな意味で無事でよかった」
「ああ。RQに会えてよかったよ」
「あんな奴は記憶から消し去ったほうが幸せだぞ・・・」

また、苦虫をつぶしたような顔に戻って、春人はRQが消えた方向をもう一度見つめた。


数日間のうちに、いろいろあって、考えることがたくさんできた。
でも、春人は帰ってきたし、それに・・・オレとしてはRQにまた会いたい。
たしかに、比類なき変態だったけど、悪い奴じゃなかった。
一緒にいると妙に気が合うところもあったし。
ところで、RQは明日か明後日にはまた懲罰房に入れられたりするんだろうか。
長官さんも、苦労が絶えないんだろう。
もし、連絡が取れるならば、シャワー中には鍵をかけたほうがいいと言っておいてあげたい・・・。