-ピンク色の旋風-

暗闇の中で、一人の男がグラスを傾けていた。
液体が銀色の掌に反射して、琥珀色の光を放っている。
空間の中で、そこだけが薄光を浴びているようだった。

「我が力の一部が消え去った」

「は・・・?今なんと」

男の手の中で、ピシッと音が鳴る。
バリッッ
グラスがひび割れ砕け散った。

「なにが起こったというのですか!」

「地球人を名乗る生意気な生き物たちに出来るはずもない。たとえ、SSGと呼ばれる連中であったとしても」

「では」

「・・・」

男は黙った。

「まさか、あの中途半端の仕業か」
「なんと!」

しかし、あいつはソフィアが始末したはずだ。

「このことはソフィア様にお伝え・・・」
「いや、面白い。このまましばらく泳がせてみよう。ソフィアの真意を知る必要がある」
「はぁ」

「もし、あいつが生きていたなら・・・」


生前の100分の1の力だとしても、ソフィアが抑え切れなかったのだ。
ただ・・あれが抑えきれずに見殺しにしたのではなかったとしたら・・・。

意図的に取り逃がしたとしたら・・・。

何を考えている。

水の女王。知恵の女神。


「それよりも、私が動いているのをソフィアに気づかれてはいないだろうな」
「それは・・・地球人どもを操っているので、目に付くことは少ないかと。表向きは地球人の企てに映るでしょうな。SSGどもも我々の存在には気づいていない様子」

「そうだな。しかし、もしあいつが生きていて、SSGと接触を図っていたとしたら、どうなる?」

「さっそく探りを入れましょう」






従者が消えた後、男は一人割れたグラスを拾い上げた。
銀色の掌には傷一つつかない。

「おのれ・・・」

あの日、両腕が砕け散った日から、肩から下の感覚はなくなった。
持てる力を結晶化して封じ込める技をトラップとして仕掛けられたのだ。
目の前で、肉体の一部が溶岩のような石に変わっていくのに、なすすべはなかった。

あいつがいなければっ!!

グラスの破片を粉々に砕く。

結晶化した己の力は、二度と身体に戻ることはなかったが、遠隔操作するすべを覚えた。

彼自身はそれを”争いの石”と呼んだ。

SSGという生意気な地球人の集団を痛めつけるための計画は、彼にとって来る日のための布石だ。

「あいつの力が復活した日、我らが再び地球を支配する」

途中で頓挫したソフィアの計画が、もう一度復活すれば。

「デュナ、もう一度おまえに会えるのが楽しみだ」

言葉とは裏腹にその表情は凄惨な笑みを浮かべている。
どうせ、もう一度会えるとしたら、器としてのおまえの姿じっくり眺めてやろう。

必要なのは、デュナ、おまえの力だけなのだから。


男は、暗闇のカーテンを引いた。

そこには、静寂を保つ星の空間が広がっている。

遠くに見える青い星。
あれが地球だ。
数千年前までは、彼らのものだった星。


あそこに奴が生きているというのか。


確立は低いにしても、今回の事象はそれしか説明が付かない。
”争いの石”、我が力を浄化したものがいる。
まったく痕跡も残さずにだ。
下手をしたら、地球人があの力を持つことになる。
そうなれば、少々面倒だ。

もし、完全に浄化されていたら次に使用されても、痕跡は残らない。
早々に調べる必要がある。

そして、あいつがもし生前の力を取り戻すようなことがあれば・・・。

男の視線が鋭く光った。



ーENDー



~あとがき~

ギャグに始まり、いきなりのシリアス展開になってしまいました~。
当初はもっとふざけた話にするつもりだったんだけど、この後続く「南国」への前置き的な話のため、こうなったという次第です。

RQとスキュラ族の関係とか、春人がもらった石とか、たぶん敵の存在とか。
これは「RED」とか、「永遠のダンス」とかに通じてます。
「永遠のダンス」・・・別にコッペリウスの変な知り合いの話ってだけじゃないんだよ(笑)

それにしても、RQって何者なんでしょうねぇ~~。

  END