-南国-

あんなこんなことをしていたら、夜になり・・・
いつの間にか、リヒャルトの隣にはRQが横になっていた。

しかも、寝息を立てていた。

「まったくこいつときたら・・・」

「おまえはアポロより手がかかるぞ」

鮮やかなピンク色の髪を優しく撫でてみる。
そして、頬に手をやった。

まだ若い・・と思う。
時々忘れてしまうが、どう考えてもRQはリヒャルトより10歳以上は年下に見えた。
規則的に寝息を立てているところからして、酒に酔って寝ているのだろう。
RQは酒が強くない。

「嘘・・」

唇にも、そっと触れた。

「私たちは、アポロをうまく育てているかな・・・」

急に変な気分になって、リヒャルトは自分の着ている服を見た。
普段着ている軍服と違って、白いTシャツだ。
この服はずいぶん風通しがいい。
服のせいで、変な気分になるのだ・・・とリヒャルトは思った。

RQが目覚めないことを祈りつつ、その胸に顔を寄せる。

「ずっと、このままなら・・・」

自分の発言を取り消そうとは思わなかった。
だって、RQはいつも勝手にどこかに行ってしまう。
情熱的な愛情の持ち主かもしれないが、鋼鉄の如き貞操観念の持ち主だとも思えない。

わかっている。わかっている。

リヒャルトは何度も頭の中で繰り返す。

誰よりも自由を好んでいるのも、とっさの思いつきが素晴らしいのも、自分よりも世の中に精通している点も認めている。

・・・縛られると、こいつは死んでしまう。

リヒャルトはRQの腕を自分の身体に回させた。

もし、こいつが今起きたら殴りつければいい。
そうして言おう。

「おまえなんか大嫌いだ」

…と。




RQが目覚めた時、リヒャルトが腕の中で丸くなっていた。

まるで、猫のアポロみたいだ・・・。

しかし、いつの間にこんな格好で寝ていたのだろう。
たぶん、二人で横になっているうちに、寝ぼけてリヒャルトの身体に腕を回していたに違いない。

起きたら殴られるだろうな。

その時のリヒャルトの顔を想像して、RQは笑みを浮かべた。
一度や二度殴られるくらいであきらめていては、この恋はもっと前に終わってしまっていただろう。それに、困ったことにRQはリヒャルトのどんな顔も好きだった。

「自分でも驚くほど、惹かれている」

愛情が高まるほど、同時に頭がフル回転してしまう自分の性格に苦笑しつつ、

「からかっているつもりはないんだ。あんたが立派すぎるから」

言い訳を呟きつつ、眠っているリヒャルトの前髪をそっと撫でる。

「こんな気持ちが恋だとしたら、間違いなく初恋だと思う。
そう、きっと最初で最後の」

くすぐったそうに動くリヒャルトから手を離して、RQは自分の掌を見た。

リヒャルトに触れるための手、腕。決して失ってはいけないもの。
今の自分を生きていこう。
たとえ、何かを失い、捨てることになっても。
なくせないものを見つけたから。

オレはRQ。あんたに惚れてる謎の男。

それでいい。



薄明かりが部屋に差し込む頃、二人は同時に目覚めた。

リヒャルトが眠りに落ちた時よりも近くにRQがいたし、RQが再び眠りに落ちた時よりもリヒャルトが近くにいた。

しばらく二人とも気まずそうに黙りこくっていたが、やはり口火を切ったのはRQで、
「抱きしめられたいんなら、寝る前に言ってくれよ~」
と言い、ニヤリと笑った。
「そんなつもりはないっ!」
すかさずリヒャルトの鉄拳が飛ぶ。

いつものとおりの二人。
だけど、それでよかった。