日向は、僕達に着いて来る事に決めたようだ。
手に抱えたのは僅かばかりの缶詰。
「ちょうどよかった。もう食料が底をつきそうだったんだ」
先ほどから黙っている彗に総一郎がこそりと話しかける。
「僕達も食料がないなんていったら、あいつ何するかわからないぞ。
ここは連れて行かないほうがいいんじゃないのか?」
「そういうわけにもいかないだろう…それに」
「大丈夫。私達は生かされている」
そばで弥生が言った。
「オレたちが意図的に集められたのだとしたら、集めた奴がオレたちを殺すわけがない。
そういう事か?」
「もうじきわかる」
「でも、でもさ。どっかの映画で見たんだけれど、その誰かが、人の極限状態が見たくてどこかに監禁する変質者だったらどうするんだよ?」
「それならば、一所に集めるはずだ。そのほうが観察しがいがある。ましてや、こうして出会うかどうかわからないところに飛ばしたりしないだろう」
青ざめいている総一郎に彗がクールな面持ちで話した。
「どういう目的にしろ、オレたちは生き残らなければならない。一人でも多いに越した事はないさ」
「う~ん」
総一郎は納得しきれない表情だ。
僕は日向と話してみる事にした。
すると、意外にも彼はペラペラとよくしゃべる人だった。
「おまえの夢はなんだ?」
突然そう聞かれても口ごもってしまう。
僕がまごまごしていると、日向はぐっと拳を握り
「オレは世界一のムエタイ選手になるんだ!」
と言った。
「本当はこの歳からタイで修行したいところなんだけどさ、学校があるから」
そう言って「やってらんねーな」と笑った。
「僕も学校嫌いだね」
もっとも僕が学校嫌いなのは、夢を追いたいからというよりも周りに馴染めないだけなのだが。
「おまえは学校が嫌いなのか?」
突然、後ろからにゅっと彗が顔を出した。
「わっ!」
「オレも嫌いだ」
「大体、オレの質問に答えられる教師が不足している。中学にいけば少しは高度なものが学べると聞いていたのにがっかりだ。あと一歩で某国の国防省にハッキングできるところだったのに
重要なところで教師は役に立たん」
「・・・・」
それ止めたんじゃないっすか?
っーか一歩間違わなくても犯罪でしょうが…。
また妙なところで無敵ぶりを発揮した彗の横で、総一郎も「僕も学校嫌いー」と言った。
僕の通ってる中学さ規律が厳しいんだよね。服装の自由とかそんなものが全然なくて、違反したら退学にするっていってるし」
「それはおまえみたいな奴をのさばらせたくないんじゃないのか?」
「まさかー!厳しすぎるだけだよ~」
僕は心の中で、総一郎よりも彗を野放しにしとくほうが国家レベルで危険なんじゃないかと思った。
「私も学校嫌い」
シルバーに乗った弥生が呟く。
「皆、私の事特別扱いにするのだもの」
「ふーん。大切にされているのと違うんだね」
「うん」
総一郎は弥生の返事を聞くと頷き
「たしかに特別は嫌だね。僕もよくわかるよ。だから、逆らっちゃった!」
金色に染めた頭を照れくさそうにかいた。
そういえば、総一郎もどっかの銀行頭取の息子なんだっけ。
「じゃあ、私も逆らってみようかしら!」
と、珍しく歳相応の笑みを浮かべ弥生は言った。
「なんだ、皆似たようなもんじゃないか」
日向が振り返った。
「ああ、あとそこの金髪。さっきは悪かったな、大丈夫か?」
「草薙総一郎だよ。悪いけど、もう、か弱い僕はボロボロさ」
「すまない」
礼儀正しくお辞儀をする日向の横で、彗が
「こいつはこういう扱いが慣れているから大丈夫だ」
と説明している。
「チッ…ショタコンへっぽこぐるぐる眼にヘの字口が…」
ポツリとぼやく総一郎に僕は教えてあげた。
「彗って、地獄耳だからさ…」
その後、住処に戻る途中で日向に自己紹介をする際に、彗が総一郎の説明を事細かにしたのは
言うまでもないだろう。ロリコンにはじまり、最近の失敗談…以下略。
住処の学校に戻った僕たちは、弥生が言った事を事実として受け止める事になる。
見つけたのは…僕だった。
「それで、皆でここに住んでいるんだ」
階段を登ろうとした。
「へぇ、地下もあるのか」
「…?」
日向が地下に続く階段を見つめている。
僕は彗と顔を見合わせた。
「地下…なんてあったか」
しかし、それは当たり前のように地下へ続いている。
もちろん、あたかも初めからあったように。
「行ってみよう」
ちょうど視聴覚室に蝋燭があったので、それを灯して地下に進んでいった。
「ここは…」
そこは倉庫に繋がっていた。
食料が山積みにされている。
「これはすごいな!」
何も知らない日向は声をあげた。
息を飲む僕達。
彗がポツリと言った。
「ゲーム再開と言うわけか…」