-後日談3 運命の決闘~マントマンVSダブルソフト~-
「果たし状?」
アレクは、ボイルから一枚の紙を受け取った。
研究を終えていないボイルは、あれからも何度かイルミーネ国にデータを収集しに行っている。
そして数日前、隣国であるバストールの使者から、未来の拷問手品師に渡して欲しいと一枚の手紙を手渡されたのだ。
それが誰のことか分からず、こうしてアレクに相談しているのだが。
「拷問手品師ってのは、間違いなくアイスだな」
アレクはげんなりとした顔になった。
あの子は非社交的だから心配で…と、アイスの育ての親のロビンではないが、アレクも同じことで悩んでいる。
そのアイスに良き遊び相手が出来たのは実に喜ばしいことなのだが。
「こんなのが友達でいいんだろうか…?」
アレクは、へたくそな字で書かれている手紙を読んで、首をひねった。
未来の拷問手品師、チョコミントクッキーアイス・ダブルソフトへ
明後日の明け方、例の場所で待っている
永遠の好敵手、マントマンより
PS:復活してパワーアップした俺に、恐れをなして逃げるんじゃないぞ、ダブルソフト!
なんのことだかサッパリである。
拷問手品師というのがなければ、アイスだとは分からなかっただろう。
「あいつ、いつの間に改名したんだ…?」
うまそうな名前じゃないか。
アイスに甘いものほど似合わないものはない。
あまりのギャップに、アレクは堪えきれずに笑いだした。
「ダブルソフトか~。エクセルさんにこんなファンシーな趣味があるとは思いませんでしたよ」
「もしかすると、アイオンの遺伝子に目覚めたのかもしれないぜ」
「ああ、なるほど。ファラディさんはそういうの、好きそうですもんね」
などと、二人が笑いあいながら納得していると。
「「っ?!」」
音もなく飛んできたメスが、ビィィンと音を立てて壁に突き刺さった。
ボイルの髪が数本切れて、はらりと床に落ちる。
「エ、エ、エクセルさん…ななな、なんで、こ、ここに…!」
まさかこんなタイミングでアイスが現れるとは思わず、ボイルは激しくどもった。
「アイス、どうしてここが分かったんだ…?!」
アレクも珍しく慌てている。
「例の二人が倉庫B57に消えたとウィングに聞いた。まさか、こんなところに隠れていたとはな…」
ターゲットを前にして、アイスの赤い目がギラリと光る。
「私から逃げとおせると思ったのか?お前らが私に嘘をついた罰、まとめて片付けよう」
「嫌だああ!僕はまだ死にたくない!なんとかしてくださいアレクさん!」
殺る気満々のアイスを目の前にして、ボイルは錯乱している。
「アイスの殺略スイッチが入ったら誰にも止められねえ!」
「そんな~!!」
口々にそんなことを言いながら、二人はじりじりと壁のほうに後ずさる。
アレクは、アイスの剣幕に思わず果たし状を落とした。
「…それはなんだ?」
アイスの視線がふっと床に落ちる。
しかし、死の瀬戸際に立たされた二人は、それどころではない。
答えが返ってこないものだから、アイスは紙に目を向けたまま、慣れた手つきでメスを数本、二人のほうに投げた。
それらは服を突き刺し、二人を壁に固定した。
「ひいい!」
ボイルは今にも失神しそうである。
「落ち着け!あいつはそう簡単に獲物を殺さない!」
「悶え苦しんで死んでいくなんで、もっと嫌ですよー!!」
今回ばかりは、アレクの言葉も慰めにならない。
しかし幸運なことに、二人のやりとりは拷問手品師には聞こえていなかった。
アイスは、果たし状を読んだときの姿勢のまま、固まっている。
「おのれ、マントマンの奴め…人の名前をことごとく間違えおって…」
握り締めた拳がミシッと音を立てた。
「その腐った根性、私が叩きなおしてやる…!」
抑えた声でそう言うと、アイスはひらりと姿を消した。
――どうやら自分たちは助かったらしい。
その場に残された二人は、ぽかんと事の成り行き見守っていた。
「ダブルソフトさん、行ってしまわれましたね」
まだ混乱状態にあるボイルは、そのチンプンカンプンな名前を使った。
「…ボイル、命が惜しかったら二度とその名前を口にするな」
アレクは静かにそう言うと、メスを服から引き剥がした。
「あいつのことが心配だ。様子を見てくる」
「それって自殺行為なのでは…?」
せっかく助かったのに、とボイルは疑問に思う。
「アイスに何かあったらどうするんだ!」
「あの人は害を加える側だと思うのですが…」
何度も殺されかけているのに、よく心配できるものだ。
この二人の関係、ボイルにはいまいち分からない。
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