-白い華(Snow Flower)-

「ディアヌ…」
呟くマクシミリアンの前に来て、ディアヌは、丁寧に、そして優雅にお辞儀をした。

薄手の白いドレスがふわりと舞う。

「陛下。このようなところまで、お出でましくださいまして、なんとお礼を申し上げてよいものか」
「…ところで身体は大丈夫なのですか、なにやら顔色がよくないように見受けられるが」

「はい…」


「どうぞ、こちらへ」
ディアヌは、一段上がったテラスにマクシミリアンを導いた。
「大した御もてなしもございませんが…」
「いい。今日はそのような事のために来たのではないことくらい、貴女も承知のはずだ」
「・・・」
ディアヌは黙って席につくと、呼び鈴をならして「ウズメ」と呼んだ。

すると、先ほどの老婆がティーセットを持ち、やってきた。

「侯爵夫人…私に何かおっしゃりたいことがあるのでは…」
「・・・」
ディアヌはしばらく黙った後、口を開いた。
「そのような不躾な話から…始められるのですか…」
「すまない…」

ディアヌの表情は穏やかながら、内で何かが燃えているような気配がした。
しかし、あくまでそれを内に秘めたまま、侯爵夫人は口を開いた。
「せっかく、久方ぶりにお会いしたのです。昔語りでもしませんか」
紅い唇が緩やかに笑みを形どり・・夏にしては冷たい風があたりに漂った。



なんだろう…先ほどから、ディアヌの声が遠く聞こえる。

耳に何かを付けられたような…ブゥゥンと嫌な耳鳴り。

「それで…」

ディアヌは、こちらが聞いているかいないかも気にしないように、口を動かし続けている。

「ディアヌ…」

名を呼ぼうとした口さえ麻痺して…。

おかしい…なにかが…。

そして、麻痺しているはずの身体が内側から熱くなっていく。
なんだこれは?

「陛下…いかがなさいましたか」
ディアヌの落ち着き払った声が聞こえた。
「ディアヌ…何を…した…」
まさか、飲み物の中に、何かを入れたのか?

「別に何も…」

そう言うと、ディアヌはふわりと席を立った。

「陛下…」
テーブルに伏したマクシミリアンの肩を後ろから優しく抱くと、ディアヌは囁くように耳元で呟いた。
「あのような小娘。下賎の小娘の身体ではご満足ではないでしょう」
「ッ…」
高貴な侯爵夫人の言葉とは思えない一言を聞いて、マクシミリアンは驚愕した。
「デ・・」
ディアヌの手が触れるか触れないかギリギリのところで、マクシミリアンの身体を撫で上げる。
「ィア…」
ピクリと、マクシミリアンの身体が撥ねた。
「ほら、貴方の身体が欲しいのは、もっと違うもの。欲しいのでしょう、私の身体が…」
スルリと白いドレスが地に落ちた。
「もう、我慢できない?思う存分奪っていいのよ。ほら、あなたは入るところを探してウズウズしてる・・」
フフフ・・と、ディアヌは妖艶な笑みを零している。

「・・・・やめ・・・ろ!」

ディアヌが僅かに肩を押しただけで、マクシミリアンの身体は地に落ちた。

「ぐっ!」
「ああ、愛しいあなた。貴方の身体…ずっと、欲しかった……なんて美しい…!」

マクシミリアンの衣服を乱暴に取りさり、ディアヌはうっとりとした顔を見せ、その身体の上に乗った。


「ああっ・・・」
歓喜の声をあげるディアヌに、マクシミリアンは呟いた。

「狂っている…こん…な」


夏の花の匂いが、厭らしいほど香った。