-運命-

―アルキュード候追放―

ここは、檻の中だ。

抵抗しても無駄だ。
棘のついた檻は近づくものを容赦なく傷つける。

なのに
どうして、あなたは自らその檻を掴み、声をあげるのか?

何もしなければ、受け入れれば、ずっと楽になるのに。

「愚かな」と笑う私が、いつの間にかその愚かな行為に加わっている。

それなのに、あなたはここにいる私に気づかず、先に檻を打ち破ったあいつと遠くに行ってしまう。

「痛い、痛い!…兄上!」
泣き叫んでも届かない。
手を伸ばしても届かない。

「私は、あなたに話したい事がある!聞いてほしい事が.…
この檻の痛みを知っているあなたならわかってくれるはず」
「兄上…トト…行かないで」
「叫ぶ名をそれしか知らない。私はあなたみたいに、母を呼ぶ事も、父を呼ぶ事もできない」
「誰か私の名前を呼んで…」

「私は”マクシミリアン陛下”じゃない…」

せめて、この泣き声でも兄に届けばいい。



「どうかお考え直しを、陛下!」

先ほどから、バストール王宮内の謁見の間はざわついていた。
国王が独断で、とある客人を追放処分にすると命じたからだ。

「どうか、陛下。お聞き届けください!両国のために」
「両国のためとは、あれをカードとして使うという事か?」

国王の刺すような鋭い視線にさらされて、臣下は口を噤んだ。

「我が国は、そのような小細工を使わずとも、かの国に優位な立場にあり続ける。そうであろう?」
「…しかし、母后がどうおっしゃるか…」
「母上は…オレが説得する」
「…しかしっ…」

「陛下!」
ざわめく広間に入ってきたのは、ここのところほとんど人前に現れることのなかったアンジュー公だった。
「アルキュード候の件につきましては、しばしお時間を…」
ひれ伏すアンジュー公を国王サングは醒めた視線で見下し、言った。

「アルキュード候はこの国より追放する!」

「せめて、宮廷への出仕を禁じられては」
アンジュー公は下がらない。
アルキュード候ジュールと国王サングの間に諍いがあったとは聞いていたが、まさかこのような結果になるとは思っていなかった。
たかが、子供のケンカだと考えていたが、彼らは立場のあるもの同士。
それに、今ジュールがイルミーネ国に帰ったら、また兄と争うための道具にされるだろう。
ジュールのために、どうしても引き下がる事はできない。

「現在、アルキュード候を追放する事は危険すぎます。またイルミーネに諍いを起こす元となる。
それはバストールにとっても決して得策とはいえないでしょう」

「イルミーネに争いを起こさせなければいい。アルキュード候に王位継承権永久放棄の誓約を。
バストールとイルミーネ、両国の前で誓わせればいい。さすれば、今すぐに担ぎ出す者などおるまい。
また、イルミーネ国王の身になにかあった場合は我が国が介入する。
どちらにせよ、諍いの元は封じられるだろう。
現イルミーネ国王が死去しても、アルキュード候に王位継承権はないのだからな」
「それは…」

サングの言う事は正論ではあったが、無理やりすぎた。

「では、アルキュード候の立場はなんといたします」
アンジュー公は震える手を押さえて言った。
人形のような甥の顔が浮かんで消えた。
「イルミーネの一貴族。アルキュード候のままだ」
「アルキュード候がそれを認めるでしょうか?」
あの子は、生まれた時からイルミーネ国王の子と言い含められて生きてきたのだ。
兄の地位を奪うという野心がなかったとしても、突然の変化を受け入れられるだろうか?

「奴には拒否する権利などない。アルキュード候は前国王に実子と認められていたわけではない。
ならば、そもそも王位継承権など持っているわけがない。それをまわりの者にはっきりとわからせて、諍いの元を取り除くだけだ」
サングの言い方には、支配する者とされる者の差がはっきり現れていた。
アルキュード候がどう思おうと、国王の命令には逆らえまい。

「しかし、イルミーネ貴族の反発をまねくのではありませんか?
アルキュード候への命令そのものが、バストール国からの干渉です」
だが、サングは答えた。
「アルキュード候は、我が国に自ら逃れてきたのだ。イルミーネ国王暗殺未遂の一件でな。
…そうだっただろう?」
「は…」

誰もが、アルキュード候が企てたものだとは思っていなかったが、事実だけ言えばそうなるのだった。

「ならば、この件に決着をつけるため我が国が間に入り、アルキュード候王位継承権放棄の誓約を結ばせる事にイルミーネ側から何の反発が出ようか。もし、意義を唱える者があれば、その者は国王暗殺未遂に関わった者とみなされるだろう」

たかが、子供の独断ではなかった。
理屈が通っている意見に臣下達は口を塞ぐ。

それでもアンジュー公は言った。
「アルキュード候の陛下へのお気持ちはいかに…」
「そんなものは関係ない。奴がどんなにオレを恨んでも、憎んでも…」

もはや…自分のできる事はないとアンジュー公は悟った。
サングは一人の子供ではなく、その地位に相応しい力を持ち、この国を動かしている。
しかし、ジュールは…。



「・・・」
アンジュー公から、その件を聞かされたジュールはしばらく口を閉ざしていた。

「ジュールすまない。君の身をまた守ってあげる事ができなくて。
でも、サングは決して、おまえを恨んでそうしたのでは…」
「優しい嘘は…」
ジュールの表情は見えなかった。
「たくさんついていると、いつかただの嘘になるから…」
「ジュール、私は…」
「あなたの口癖ですよ、伯父上。私を愚かだと思うでしょう。あれに逆らわなければ、こんな仕打ちを受ける事もなかったのに」
「イルミーネに戻っても、私の事を頼って欲しい。こうなったのは、私の力が足りなかったせいだ」
だが、肩を抱くアンジュー公の手を振り払い、ジュールは言った。
「私には、もう失うものなど何もない。行く所も、帰る所も…」
そして続けた。
「私は”あれ”を一生許さない」
「ジュール!」
声をあげたアンジュー公から身体を離して、ジュールは笑ってみせた。

「大丈夫。事を起こすつもりはありません。でも、この先たとえ殺されてもあれには頭を下げるつもりはない。すみません、少し一人にさせてください」

アンジュー公は部屋から出る時、一瞬振り向き
「ジュール…きみは信じてくれないかもしれないが、サングはきみに自由をくれたのだ。…きっと」
「・・・」
しかし、ジュールは振り向かなかった。

かすれた息が窓ガラスにかかる。
声は息とともに消え去った。



…父上…





次の日、トトは王弟の部屋を密かに訪ねた。
アルキュード候追放の件を聞いての事だった。

「ジュール、私は…その…」

何をどう言ったらいいのかわからず、トトは言葉を濁らせた。

この件はバストール国王サングの独断で決定した事であり、イルミーネ国王のトトには一切知らされていなかった。しかし、イルミーネ貴族の反応は静かだった。
そもそも、アルキュード候に王位を放棄させようとしていたデティオール卿やリーチェ公夫人はともかく
アランソン一派も声を潜めていた。

「陛下…」
ジュールはあいかわらず人形のような顔を崩そうとはしなかった。

「私の罪です。兄上にご迷惑を」
「何を言っているんだ!…ああ、私はどうしたら…」
落ち着かない様子のトトを見て、ジュールは微笑んだ。
「別に、あなたは何もなされなくていい。これがイルミーネとバストールのためになるのなら」
「でも!」
「私はそういう立場なのだから」
「サングに言うよ、馬鹿なことはやめろって。私が言うから…」

サングがここまでするとは、思っていなかった。
いくらジュールとの間に何かあったとはいえ、追放の上に「王位放棄」の誓いまで!
以前、ジュールはトトの前で王位を継ぐつもりはないと言ったが、このような形になると彼も感じるところがあるかもしれない。

皆の視線に曝されて…

トトは自らの戴冠式を思い出し、顔を曇らせた。

「ジュール。サングはああ見えても意地っ張りだから、形だけでも謝れば…」
「お断りします!」
ジュールのはっきりとした返事にトトは震えた。

サングに対し、何か無礼があったとは聞いていたが、彼が本当にそんな事をしたのか?
私が部屋を出て行った後、何があったのか…。
サングも皆もその事は口を閉ざしていた。
その後、部屋を出た私に放たれた人間味のない台詞。

いつもと変わらない表情の片方は赤く腫れていた。
「ジュール…それはサンにやられたものかい?」
トトが頬に手を伸ばすとジュールは身をかわした。
「あなたが私の事などに気を使われなくてもよいのです。イルミーネ国王はあなたただ御一人。
私は王位になど興味はないのです」
「…あ・・・」

ジュールの物言いにトトは気圧されているようだった。
しばらく黙って下を向いた後。
「でも、言いたい事があるなら私に…」
かろうじてそんな言葉が出た。

「私は兄上…あなたに言いたい事だけがわからない」
「え?」
今度はジュールが俯く番だった。

「ともかく、言いつけに従うことには慣れています。あなたは黙って見ていればいい」
「ジュール…そんな…」

弟の本心が見えない。
言葉に納得がいかない。

トトがもう一言言おうとした時。

扉が開き、バストールの使いが入ってきた。
「アルキュード候におかれましては、明日、王の間においでくださるようにとの国王陛下直々の御達しであります」
「サンっ!」
トトは部屋を飛び出していった。

それを確認した後、ジュールは使いにありきたりの返事を返した。
「そのお言葉に従います」



今日、トトが来た。
酷く慌てた様子で、弟の事を聞いてきた。
オレは質問に答えなかった。
ただ「兄弟は一緒に暮らすべきだろう」と言った。
それ以上言ったら、猛烈な反発を食らう事がわかっていたからだ。

トトも、いつかは弟が自分の元に帰って来ると考えていたらしい。
その事については深く追求しなかった。
だが、上から命じた事については、何やらぶつぶつと文句を言っていた。

どちらにせよ、もう済んだことだ。

サングは一人テラスに出ると、城の周りの景色を見渡した。

-ここから見えている全てがオレの責任なのだ-

トトも全てが明らかになれば、もうそれ以上は言わないだろう。
バストールを争いに巻き込むわけにはいかない。
そのために犠牲が必要なのだ。
最低限の犠牲が。

真正面から睨みつけてきた青い炎のような瞳。
耳元に残る声。

「私のように生きてみればいい!」
心に何かが灯った。怒りの炎か、それとも…。


「・・・馬鹿な奴」
今日のバストールを包む風は誰かのように、とても冷たかった。




次の日、アルキュード候ジュールはバストール王宮の広間にて、両国の前で王位継承を破棄する誓約に調印した。
その中では、さすがに追放の命令までは出されなかったが、その場にいた者は全てそれを知っていた。
人々の視線が突き刺さる中、ジュールは終始表情一つ変えずに物事を進めていった。
誓約書に自らの名を刻む瞬間に何かを呟いたようだったが、声は誰にも聞こえなかった。

だが、一人だけその言葉を知っている者がいた。
「オレにもおまえにも、生まれ落ちた時から守ってくれる者なんていないんだよ」





その夜。
いつものように夜会が開かれた。
今日だけはアルキュード候も出席しないだろうと思われたが、彼はいつもと変わらない笑顔でそこにいた。
人々は遠慮がちに彼を避けていたが、彼がごく自然に話をし始めると、皆は聞き入った。
彼にはやはり人々を惹きつける魅力があり、あのような事実の後でも消える事はなかった。

トトは、夜会で初めて弟に自分から声をかけた。

「ジュール…すまない」
「いいえ、いいえ」
ジュールは言った。
「これでやっと身が軽くなりました。イルミーネにも帰る事ができる」
「でも・・」
「あなたとこうして向き合ってお話する事もできる」
「ジュール…」
ジュールにいつもと変わったところは見受けられない。

「おまえの身はイルミーネに戻った後、私が守る。必ず!」
「兄上…」
トトの言葉に偽りがない事はよくわかっていたが、いかんせん自分の肩にようやく頭が届くような兄に
”守る”と言われてもどこかおかしい…。
それでも先日は「会いたくない」と言われて、地に叩きつけられたような気がしたものだ。
その同じ人が次には大真面目な顔で「守る」と言っている。
ジュールは口元を隠し、苦笑した。

それでも、この人を憎めない。
どうしてだろう…。

「それで、ジュール…」
トトの次の言葉は大きな声にかき消された。
「トト!こんなところにいたのか!」

サングだ。
近づいてくるなり、ジュールをキッと睨みつけ、トトの手を引いて去っていった。
「サン!私はジュールと…」
「関係ないだろう、あんな奴!」
「…だって、あれは私の弟だ」
「それがどうした」
「…」
トトが一度だけ振り向くと、ジュールがこちらを見ているのがわかった。
変わらぬ表情の奥に、寂しさが宿っているような感じがして、トトはサングの腕を振りほどこうとしたが
その力はあまりにも強く振り払えなかった。

サングのジュールに対する態度は変わらなかった。
トトはサングの「兄弟は一緒に暮らすものだ」と言う言葉に期待をかけていた。
追放という手をとったのも、それを考えての事だと信じたかったが…。


二人の行く先にアランソン・クルーレの白い姿が見えた。
「これは両陛下御揃いで、…ごきげんよろしゅう」
「…」
トトは警戒心を剥き出しにする。
この者が反改革派の中心にいる事は知っていた。
だが、サングは…。
「クルーレ候。こうして直接話をするのは初めてだったな。イルミーネの中でも特に優れた御人だと聞いている」
「これは、これは、恐れ多いお言葉。私めなど…」
トトは黙って二人を見ている。
サングがクルーレ候を評価するのは気に食わないとでも言いたげな顔だ。
サングは、かまわず続けた。
「そんな優れた人の事だ。私がまだ年若い王だと見くびられるかもしれないな」
「まさか…その様な事は…」
アランソンの声が一瞬高くなった。
「見くびってくれるなよ…」
アランソンの声とは逆に、サングは低く呟くと
「さぁ、いこうか」
とトトを連れ、その場から立ち去った。




またジュールとは話せずじまいだった。
サングがあの時現れなければ…。
でも、イルミーネに帰れば、また話をする機会も訪れよう。

トトは弟の顔を思い浮かべながら眠りについた。




ジュールは外の風を浴びながら、兄の事を考えていた。

今は自分の事を考えなくてはいけない。
…なのに頭は現実を拒絶するように、サングに連れ去られる兄の姿を浮かび上がらせた。

時として酷く頼りなく、また恐ろしいくらい強い意思を感じさせることもある彼。

またもサングに奪われてしまった。
「本当にあなたを求めているのは、私のほうなのに…」
自分で言った言葉が、胸に突き刺さる。
「私は…」

あの人の中に、私と同じ血が流れているからだ。
なのに、私の立場はアルキュード候。もはやあの人と並び立つ立場ではない。
兄は、私のたった一人残された肉親だから。
こんなにも、警戒されて拒絶されて何一つ理解してもらえなくても。

何が「私が守る」だ。
自分の身くらい自分で守れる。それよりも、トトこそ自分の身を守るすべも知らないのに。
あの時、私がデティオール卿に知らせなければ、あの人は暗殺者の手にかかっていたのだ。
そうして、王位は私のものになっていた。
あのバストール国王に物を言える立場になっていたのだ。
それでも…私はあなたに生きていて欲しかった。

あの時には理由がわからなかったが、今なら少しわかる。

私は、私自身よりトトの事を気に入っているのだ。
私は私の姿が嫌いだ。いっそ切り裂いてしまいたいほどに。
だが、それを他人に言われる筋合いはない。

サングの姿が脳裏に浮かぶ。
「あんな奴に人形呼ばわりされたくはない!」
布団を剥ぎ取り、ベッドに身を沈めた。

目を閉じると、振り返りざまのトトがもう一度浮かんだ。
「トト・・・」





サングは、ジュールの名が入った書面にサインを加えていた。
イルミーネ国王の名はすでに入っている。
彼は彼に似合わない無表情でそこに名を書き込んだ。




セバスチャン・デティオールは、臣下達とこれからアルキュード候が戻ってくるにあたっての協議をしていた。当分、アルキュード候擁立の話はないだろうが、前のように一部の人間が事件を起こすと言う可能性もある。警戒を怠るな、と彼はまわりの者たちに命じた。

彼は心の中で亡き主君に語りかけた。

マクシミリアン陛下、こういう流れになってしまいました。
私は以前、あなたの弟君の事でも同じように誓ったのに果たせなった。
お二人の争いは何があっても避けなければ。
私の一命をかけても。
どうか、イルミーネに平和を。




ビュっと乾いた音が天井まで届いた。

「アランソン様」
「…」
アランソンは振り向きもせずに鞭を振るい続けている。

計画はうまくいっていた。
バストール国の母后を取り込み、アルキュード候擁立を目指す。
バストール王宮を巻き込めば、無血クーデターは可能だったのだ。
アルキュード候の王位継承永久放棄、加えて追放。
逆らえば、流れを悪くするどころか、我が身が危うくなる。
セバスチャンらの中にバストール国王を動かした者がいると考えた。
今まで、防御策しかとってこなかったセバスチャンのやり方とは違う。強引で攻撃的な方法。

どいつだ?

夜会でセバスチャンの周囲を探ってみた。
だが、いるのはいつもの冴えない顔付きの者たちばかりだった。

イルミーネ国王とバストール国王がやってきたのはそんな時だった。

見つからなかった強敵はそこにいた。
バストール国王というもっともやっかいな存在として。
母后に再び近づくか…しかし、今動けば不利になる。
しばらくは動けない。

「くそっ!」

大理石でできた銅像に鞭の痕が刻まれていく。
貴族にしか持てない芸術品を惜しげもなく壊していく。

「・・候」
「ラル!傷つきないなら去れ!」
「いいですよ。傷ついても。あなたはそうしている時が一番美しい。あなたを見ていられるなら」
アランソンは振り向きざま、ラルに鞭を向けた。
それは彼の腕にあたり、高い音をたてた。
「顔以外にも傷を増やされたいか?」
「激しいあなたが見られるならば」
ラルはふっと笑い、顔の傷に手を当てる。
「昔の屈辱をはらしたいならば、強くおなりなさい」

アランソンの白い顔がさっと朱を帯びる。

「うるさい!」
攻撃は首筋に当たり、ラルの襟元が赤く染まった。
「そうして血を見ると落ち着かれるのでしょう?さぁもうお休みになるといい」
視線が落ちてゆくアランソンを導きながら、流れる血はそのままにラルは寝床のカーテンをあけた。

母にしがみついていたこの青年貴族をこの立場に押し上げたものは、知られざる出来事の数々だった。
最初の想い人を、地位も財産も比べ物にならない田舎貴族に奪われて、初めて逆上した彼を止めるように彼の母親に命じられた。その頃はまだ彼の屋敷を守る守衛の一人だったが…無理やり力ずくでこの高級なペルシャ猫を屈服させた。
その時、抵抗したアランソンの鞭が顔を抉った。

「私に勝ちたい思うならば、私を使える器を持てばいい」
まだ少年のような彼は、この言葉を受け入れた。
その時から、私はこの君の奴隷となった。

そうして、今はこうして彼の怒りを浴びるたびに、彼を支配していると感じる事ができる。

「わが君、永久に美しくあれ」

その唇からは薔薇の香りがした。




それぞれの想いをのせて、夜は淡々と時を刻んだ


モドル