「険しい表情と悩ましい背のラインまで、よく似てる」
「ああ!!どうしても答えが出ない!なぜ私はここにいる?」
「は?」
RQは、彼にしてはいぶしかげな顔でリヒャルトの頤に手をかけ
「大丈夫か?血圧は…よし!上がっていないな。息も荒くない」
「なんだ?なんなんだ?」
「まさか、あんたがあのくらいで酔うわけねぇよな」
「…しかし、それしか結論は出ない。酔っていなければ、私はこんな所まで来なかった…はず」
「ずいぶんと冷静な照れかただな」
「な!私はっ!」
拳を振り上げ、急に立ち上がったリヒャルトに、RQはぼんやりとした調子で言った。
「なら、シャワーでもあびて頭を冷やしてきたらどうだ?」
「…ああ、そうする」
バスルームに消えるリヒャルトの背を見て、RQはニヤリと笑った。
この時点で…まだリヒャルトは自ら罠に嵌まり込んだとは気づいていない。
バスルームから出たリヒャルトは、ここに来た理由などというものをすっかり考えなくなっていた。
さらに、もしもの時は、ここから逃げ出そうという気も失われていた。
人は、湯を浴びてしまうと、余計な考えまで洗い流してしまうものらしい。
彼が部屋に戻った時、初めに考えた事。
それは、部屋にある2つのベッド、窓側と廊下側のどちらに寝るかの選択だった。
窓側のほうが夜景が見える…。
幸いな事に、RQは手前のほうのベッドでくつろいでいた。
「あっちのほうが窓から外が見える」
「…うん」
リヒャルトはRQに少しばかり感謝した。
景色がよく見えるほうのベッドを譲られたのだ。
身体を傾けて、外を見ると都会のネオンが下に見えた。
遠くには海が月の光を受けて、青く輝いている。
日常の疲れが吹き飛んでいく。
こんな静かな安らいだ夜は何年ぶりだろう。
SSG内の寝室は静かだが、一人でいても、つねに緊張感を強いられる。
何時、何処で、隊員達が戦っているかもしれず、事件が起こっているかもしれない。
そういう意味では一度も安眠した経験はない。
そういえば、ただ一度だけ…朝がきたのを気づかなかった日があった。
あの夜だ。
「おい!」
「なんだ?」
いつの間にかRQが背後に横たわっている。
「おまえのベッドはあっちだろう!」
「オレもここから見える夜景が知りたくてさ」
「……」
ベッドを譲られた身だ。
文句は言えまい。
それから。
あの光はどこのものだとか、出航する船の種類などを当てあったりした。
「飛行機が見える」
「あれは南のほうに飛んでいくんだ」
「いつ帰ってくるんだろうな」
RQが吐息をはいた。遠方に想いを馳せているようだ。
「…ところで、おまえはどこから来たんだ?」
RQの正体はいまだに不明だ。出身地も家族も。
驚異的な治癒能力を持つ特異体質だという事以外は何も。
「言わなきゃいけない?」
「…あ」
SSGという組織は過去を問わない。
しかし、それ以上にリヒャルトを動揺させたのは、耳に入ってきた声が子供の響きを持っていたから。
驚いて振り返ると、いつもどおりの男がいた。
「そんなにオレの事知りたい?」
次の言葉は、熱っぽい低音だった。
「…べつに」
言った後で、リヒャルトは気づいた。
自分の身体を、背後から腕が抱きしめている。
先ほどまで、不思議と心地よさを感じていて、特に意識する事もなかったが…。
気づいてしまった今、急に心地の悪さを感じて身じろいだ。
ところが、身体を動かそうとすればするほど、心地悪さを増していく。
「もう…」
言いかけると、ふいに手が上に上がってきた。
「さっきからリヒャルトの心臓の音が聞こえてた」
胸の一点を指で突かれ、リヒャルトはビクリと身体を震わせた。
「ここに手をあてなくても、肌ごしに…」
「ほら、今、大きくなった」
「聞こえるだろ?」
そっと耳を塞がれると、静かな空間は自らの鼓動で満たされた。
同時にじわじわと熱が身体を支配していく。
理性まで蕩けそうだ。
だから、バスローブの中に侵入してきた手が、胸の突起を掠めるまで何も考えられなかった。
「あっ!」
「着てるものの上からでも、わかった…ほら、尖がってる」
「やめろ!ばかっ!」
肘で攻撃してやろうとしたが、空気を切っただけだった。
「!?」
振り返ると誰もいない。
「え?」
突然、身体の上に乗られ、四肢を押さえ込まれた。
「なっ!」
そういえば、今夜のこいつは金髪だった…。
ふとそんな事を思った。
澄んだ青い瞳に捕らえられる。
初めに出会った時と同じ。
あの時、不覚にも“綺麗”だと思ってしまった。
それで、あの時も不意を突かれて…。
「う…」
口の中に生暖かい塊が侵入してくる。
激しく蹂躙するかと思われたそれは意外にもゆったりと動いた。
リヒャルトの抵抗を飲み込むほど、大きく、奥まで。
何度も。
舌の動きに合わせて、その身体が蠢き始めるまで。
「ン・・・ふぅ」
RQは、リヒャルトの浮きはじめた腰に手を入れて、下着の中に忍びこませる。
そうして、前のほうを優しく撫で上げた。
リヒャルト自身はすでに熱を持っている…。
反応をみてから、さらに奥へと進んだ。
窪みから細い道を通り、固い蕾に至った。
指先で解すように擦る。
「だ・・・だめだ」
合わせた唇の中で、リヒャルトが小さな悲鳴を上げた。
「さっきから、オレの指先に何度もキスしてくる」
RQの指が触れるたびにヒクつくそこが…自分でもどうにもならない。
やっと解放されたリヒャルトの唇から、信じられないほど甘い声が漏れる。
さらに身体中を啄ばむように刺激され、何度も囁かれる。
「綺麗だ」
特に、抉れた半身を愛撫される時は。
「好きだ」
こいつの声に流される。
全身を蹂躙するような響きのある声。
聞くたびに何度も犯される。
「…も、もうやめっ…」
そこが快感に麻痺し始めている。
それでも太い指の先を入れられると、痛みが走った。
「まだ固いな、久しぶりだし…」
RQはニヤリと笑うと、リヒャルトの足を持ち上げた。
「何を!やめ…」
そこに、冷たい感触を覚えて、リヒャルトは身体を強張らせた。
「そんなところ……」
「いい味がするぜ」
「っ…やだっ…やめてくれ」
生暖かい舌先は、固いそこを蕩けさせるように蠢いた。
自らヒクつくそこは、唾液さえ必死に飲み込もうとして、恥ずかしい音を漏らす。
「いやだ…あぁ…」
「明かりつけて、もっとよく見たい」
「ダメ…」
「じゃあ、このままでいいか」
このくらいの薄明かりの中でも…きっとこいつの目は…。
見えているはずだ。
どんなふうに?
自身でさえ、知らない場所を。
こいつはどんな瞳で見ている?
そう思うたび、身体がビクビクと跳ねた。
「ア…は、は…やく」
喉が鳴っているのを感じる。
RQは、その喉元に口付け言った。
「猫みたい」
「うぐっ!!」
「…蕩けそうだ。この身体に」
痛みとともに耳に入ってきたのは、皮膚の表面を撫で上げる吐息混じりの声。
RQがゆったりと身体を上げると、リヒャルトの中にあるものが刺激を強めた。
「き、きつい…」
「このまま、動いたらどうなるかな」
「だ・・・」
リヒャルトが何か言う前に、身体を大きく揺さぶる。
「あ、ダメだ!そこっ!!」
「ふふっ…そうなんだ」
言葉を聞かなくても、身体を見ればわかる。
何度も同じ場所を突くと、腰が跳ね上がる。
先ほどまで軽く啄ばんでいた身体を、固い手のひらが優しく撫で上げた。
その刺激でさえ、リヒャルトの理性を奪っていく。
「もっと顔が見たいな」
「えっ?」
突然、ぐいっと身体を起こされ、リヒャルトはRQの身体の上に乗った。
「リヒャルト動いてみせて」
「できない…」
「ほら、こうやって・・」
下から突き上げられて、リヒャルトの口から悲鳴が上がる。
「い、いやだ。こんな格好」
「そう?さっきから気持ちよさそうだけど」
そう言うと、RQは一層激しく突き上げた。
「あ!や・・・・やだっ!!」
しだいにリヒャルトの腰が浮いてくるのを、RQはなるがままにまかせていた。
「あっ・・くぅ…ああっ・・」
もう、腰に手を置いているだけでいい。
一端、弾みをつけた身体は、止められない。
リヒャルトは、きっと自分で動いている意識はないだろう。
何もかもさらけ出して、男の上で腰を振り続けているなどと、意識ではわかっていない。
普段、黒い軍服で身をかためた禁欲的な姿とは、あまりに対照的なその姿はひどく欲情的だった。
「っ!」
リヒャルトの首筋に、胸元に痛いくらい強い刺激がおくりこまれる。
「好きだ、リヒャルト」
「う・・・くっ…」
「好きだ、狂っちまうくらいに」
月の光を受けて、金色の髪が輝いて見えた。
「…綺麗だ」
リヒャルトは自分を抱いている男の姿をあらためて確認した。
信じれないくらいに…
「綺麗だ」
汗ばんだ筋肉質の身体、日焼けした腕、彫刻のように整った顔も、どこかいつも遠くを見ている青い瞳も。
リヒャルトは、自然と吸い込まれるように、薄い唇の間から見えている赤い舌に舌を絡ませた。
RQの舌はリヒャルトの動きに合わせて口内までも犯していく。
「ひゃ…ん、ん、い…」
「全部全部、あんたを犯したい。上からも下からも」
「は、離せっ!このままじゃ…」
いきなり、リヒャルトは身体を揺らした。
「イキそう?」
「ううっ…」
あわてて、自身を握り締める。
先ほどからRQの堅い腹に擦られ、刺激を受け続けていたので、それは止めどない涎をたらしていた。
「汚してしまう…」
「いいぜ、そのままイケよ。それと、オレは何もしないで撒き散らすリヒャルトが見たい」
そう言うと、RQはリヒャルトの手を握り締めた自身から離させ、自らの身体にしがみつかせた。
そして、抵抗の言葉を発する間がないほど、いきなり激しく突き上げた。
「やっ!!ダメだっ!!あ、ア・・・ク・・ダメ・・ア・・・ク」
「それと、これはどう?」
腰に回した手を後ろに持っていき、リヒャルトの白い尻を軽く抓っていく。
「やめ・・ひゃ・・め・・て」
「尻、こうされるの好きだろ?」
「…あ・・あぁやめ・・ア・・・ク、お願いだ!!」
きっと自分は、菓子を買ってもらえなくて泣いている子供のような顔をしているだろう。
リヒャルトは思った。
生理的な涙が、身体を揺らされるたびに飛び散る。
「お願…い…だ…もう…」
「オレ、あんたの泣き顔も大好きだぜ。それだけでイキそうだ」
リヒャルトが、そっと肩口に顔を埋めてきたので、RQは一瞬動きを止めた。
「ん?どうした」
「恥ずかしくておかしくなりそうだから…頼む…見ないで…」
強くしがみつくその腕の力が、一瞬強張った。
「あ………ィク…ィ…ん」
耳元でかすかな声がしたかと思うと、抱いている身体の震えとともに身体に熱い飛沫がかかったのをRQは感じた。
「狂いそうなのは、オレのほうだ」
そして、自らも大きな快楽の証をリヒャルトの中に全て注ぎこんだ。
その夜、2回も抱かれた。
2回目は、夜景が見えている窓に向きながら。
窓に映る傷痕を撫で上げながら、あいつは言った。
「夜景に溶け込んで、まるでこの景色の一部に見える」
傷痕が残る身体の上半分は、夜の光に溶けこんでいた。
そして、下はあいつと繋がっていた…。
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「帰ると言ったら、帰る!」
朝、とはいってももうだいぶ陽が上がっている。
「え~もう一晩くらいいいだろ?」
「カロムに戻ると約束した。誓いを破るわけにはいかない」
「なんでカロムなんだよ」
「外泊許可は事務総官に出す事になっているだろう!?」
「なんだ、外泊許可なんて取ってたのか」
RQは、服を着ながら意外そうな顔をした。
「泊まるなんて言ってなかったよな」
「う…」
「そうか、オレと過ごしたかったんだ!」
「違うっ!!」
「だから、あんなに燃えてたのか!もっと早くに言ってくれれば、いくらでも満足…」
「帰るぞ!!」
リヒャルトはいつもどおりの黒い服。
だが、昨晩、口付けられた箇所が布に擦れるたびに心地が悪く、上着をRQに預けた。
「白いシャツは、気をつけな」
タキシードをラフなスーツのように着ているRQがニヤリと笑う。
「昨日の痕が透けて見えちまうかもしてないぜ」
「!」
あわててリヒャルトは、RQから上着を奪い返し羽織った。
「もう二度とおまえと外泊なんかしないからな!」
「もし、その時がきたら、オレがあんたの分も外泊許可出しといてやるよ」
その後、カロムに礼を言いに言ったリヒャルトが、RQの所在をカロムに尋ねられ、RQが外泊許可を出していない事を知った。
「あいつっ…!規則違反で懲罰房行きだ!」
「外泊の後に懲罰房とはね…すっかり外泊づいちゃうね、彼も」
そんなカロムの一言で、RQの懲罰房行きは見送られたとかなんとか…。
| END |
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