僕はずっと一人だったから、こんな世界を望んでいたのかもしれない。
たぶん、他には何もいらなかったから。
満たされてはいけない世界の扉。
キーワードは”皆の心の一つにしてパズルを完成させる事”
答えは、すでにここにある。
「う~ん…う~ん」
「おい!浮雪っ!」
「書いても書いても埋まらない…不思議な答案」
「何、寝言言ってんだ?」
「はっ!」
目の前には総一郎の顔があった。
「すごく恐い事言って寝ぼけてたけど…」
「そうだよ!恐い夢を見たんだっ!」
…けど、どんな夢だか覚えていない。
「皆、地下室にいるよ。いろいろ調べたいんだってさ」
総一郎に連れられて、僕は地下室へ急いだ。
そこは別段普通の倉庫に見えた。
彗のGジャンが見える。
弥生がシルバーとそばで座っていた。
日向が奥にある扉を開けようと奮闘していた。
「ちくちょー!開かないんだよ。これ!」
見た目、普通の鉄製の扉。
「やめときなよ!きっと化け物が潜んでいるんだ」
総一郎が叫んだ。
「ダンジョンみたいだよね」
「なんだそれは?」
僕の言葉に、彗が反応した。
「ゲームでやったことあるんだよ。地下に進んでいくゲーム。ちょうどそういう扉があってさ。
ドアを開けると次のダンジョンにワープするんだ。もっとも、その先は敵のレベルも上がってるん…」
皆がこちらを呆然と見ていた。
「僕…変な事言った?」
「もし、そうだったらどうする?」
大真面目な声で日向が言う。
「考えられなくはないな」
と彗。
「やだよ、これ以上はもう!」
総一郎が後退した。
「弥生はどう思う?」
僕はあえてそちらに振ってみた。
「もし、相手が要求する条件を私達が満たしていたら、そうなるでしょうね」
「条件?」
「・・・」
弥生は沈黙した。
「どうして皆ここに来たの?」
「そんなの知らねぇ」
日向があっけらかんと答える。
「気がついたらここにいた。それだけじゃないのか」
「僕は、なんだか世界が嫌になっちゃったんだ。学校に行こうとしたんだけど、行く気にならなくて」
「そういえば、僕もそうさ。父さんが激怒して…もうどうなってもいいやって」
「そういや、オレも…このままでチンタラしてていいのかって…やってる事が無駄に思えたよ」
「矢崎くんは?」
「オレは・・・・」
ふと扉を向いて彗が答えた。
「空が青かった…世界が途方もなく大きくて…」
ふと、僕の背筋に寒気が走った。
彗がその時に見てしまったものが見えた気がしたのだ。
大きな世界の中の自分の存在感の小ささ。
僕が持っている世界はこんなにも狭く小さい。
目の前がすっと小さくなるような感覚。
身動きが取れない。
だから、どこか…遠くのどこかに行きたいと…。
その途端。
扉が内側から開いた!
「なんだよこれ!」
一番近くにいた日向が扉に吸い込まれていく。
違う、日向だけじゃない。
この世界そのものが…。
あの扉の向こう側に吸い込まれていく。
「死ぬ~~~~!!!」
総一郎の声が耳元で聞こえた。
「彗!」
僕は彗の手を掴もうとした。
「浮雪っ!」
だが、手は届かない。
弥生が明らかに違う方向に飛ばされていく。いや、飛ばされているのは僕たちだけだ。
「みんな!」
弥生が遠ざかっていく。
僕は途切れ行く意識の中で、弥生の「私は戻される」という声と、もう一つ…
明らかに女の子の声だった。
「私に教えて頂戴。ジグソーパズルを解く方法」
僕は呟いた。
「皆の心を一つにするだけ」