-想い-
ジュールと話す。
ジュールの話を聞く。
ジュールはとてもおしゃべりだ。
話を聞かされるのを嫌う人もいるが、私は人の話を聞くのが好きだ。
特にジュールの話は。
この人の知識の引き出しは、いつも新しいもので溢れている。
私の新しいものへの興味はサンから受け継いだ。
流動性の激しいバストール国では情報は宝だ。
ジュールもそうした血を引いているのかもしれない。
知識、それ以上にジュールの話が面白いのは、話し方がうまいからだろう。
まるで見たように話すのだ。
この人は声もいい。歌もうまい。
私などは躊躇ってしまうが、ジュールは歌を歌うのに何の躊躇いもなかった。
躊躇いのない行動というのは、相手に緊張を感じさせない。
私は、いつも実に穏やかな気持ちでジュールの歌を聞いていた。
このようにジュールは魅力的な人物なのだ。
しかし、人にジュールの事を聞かれると悩んでしまう。
どんな人なのか?
どんな人なのだろう?
その人のどこが一番好きか?
どこが気に入っているのだろう?
ただ、日々会いに行ってしまうだけだ。
そして夜になると、明日ジュールはどんな話をするのだろう?
どんな表情をするのだろう?
私と目を合わせるだろうか?
と考える。
ジュールが私の言った事に興味をしめせばいいな。
考えれば考えるほどに、夜寝付けなくなるのが悩みだ。
私は、他にする事も寄る所もあるというのに、ジュールのところに出かける。
後ろめたい理由がたくさんあるのも事実だが、正直それだけじゃない。
ジュールが私といて喜んでくれると嬉しい。
ある日、こう言われた。
「陛下がアルキュード候のところに行かれなくても、あの方なら大丈夫です。」
ジュールが怪我をしているから、私のせいで怪我をしたから、ジュールのところに見舞いに行っていると周りからは思われていた。
現在でもずっと。
私は、どうしてジュールのところに行っているのだろう。
ジュールがいつもの木の下で手を振っている。
「兄上!」
この人と一緒にいよう。
この人に一番嬉しい顔をさせる人間になろう。
「兄上?」
幸せな事を考えたはずなのに、涙が出た。
この感情の名前はなんだろう?
私は…
この瞬間、時が止まってしまえばいいと思った。