-今年の思い出-

「ひっ!」

突然、知らない男に刃物を突きつけられたジャスティンは両手を挙げた。

「年末パーティー会場はどこだ」

男は有無言わせない様子で迫ってくる。
室内でもサングラスをかけて、黒づくめの服を着た怪しい奴だ。

しまった!
こいつはSSGの誰かを狙いに来た暗殺者に違いない。
ジャスティンは口を噤んだ。

誰かに知らせなくては!

そこへ…

「やぁやぁ、きみも来てたんだね」
「これはこれは久しぶりじゃないかぁ~」

のほほんとした声が2つ。
SSG公認占い師と医者の声だ。

「脅されているんだ!こいつに。知り合いならやめさせてくれ!」

すると、二人は顔を見合わせて笑い始めた。
そして、恐れ知らずにもその男に近づく。

「年末パーティー会場はこっちだよ。私たちと一緒にくればいい」
「そうか」

短い返事とともに、男は刃物を懐にしまいこんだ。
息をついてしゃがみこむジャスティンに、Dr.コッペリウスが声をかける。

「ああ、この人はパーティのお客さんだよ。知らない人にパーティ会場を聞かれたら、ちゃんと答えてあげないと」
「おまえとは違うんだ!」

いきなり刃物を喉もとに突きつけられたら、誰も客だとは思わないだろう。
前から思っていたのだが、Drは感覚が普通とは違うところにあるのだ。
ジャスティンはひとまず、そう考えることにした。


・・・・・・・・・・・・・・


「RQからメールが行ったと思うんだけど」

兎兎がアイスに話しかける。

「たしかに奴からメールを受け取った。しかし、場所が記載されていなかったので、SSG内で聞くことにした」

そう言いながら、アイスはメールをプリントしたものを兎兎に渡した。

「えーなになに…
『猫耳天使&我が親友へ
SSG内で面白いことやるみたいだぜ!?
12月24日』
なにこれ…」

何をやるのかも書かれていない。場所も時間も記載なし。
日付だけだ。

「念のためにリヒャルトに聞こうとも思ったが、任務で多忙が予測されたため、直接出向いた」
「はぁ…」
「ところで、パートナーのアレクはどこだい??」
「奴には知らせていない」

とはいうものの、アイスは
メールを読んだのなら勝手にやってくるだろう。
と踏んでいるようだった。

そして、実際アレクはこの近くに来ていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「SSGって、こんなに広かったか!?」

アイスが過去に飛んだことはわかっていた。
しかし、アイスの後をつけてくるつもりだったものの、自分がどこにいるのかさえアレクはわからなくなってしまっていた。

途方にくれかけた頃…

「おや、あなたは」

上品そうな長身の男がこちらに歩いてくる。

「たしか、アレクさんとかいう方ですよね」
「ああ、そうだ。助かった!年末パーティー会場を探しているんだ」

この人物は、前にSSGに来たときに一度だけあったことがある。
機械部の潤一だ。
しかし、潤一は怪訝そうな表情で
「ここは、パーティ会場とは逆方向ですよ」
と言った。

「う!」

やはり、方向音痴はなおっていなかったようだ。
しかし、落ち込んでばかりはいられない。
アレクは拳を握り締めて叫んだ。

「自分の進みたい方向、それが道だ!」
「…なかなか面白いことをいう人だ」

意外にも感心したような様子の潤一は、「ちょうどいい。私も今からパーティ会場に向かうところだったのです」と、アレクを先導して歩き始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「本当に、これでうまくいくのだろうな!」

パーティ会場ではリヒャルトがRQの胸倉を掴んでいた。

「大丈夫だって!アレク宛にメール送っておいたから、すぐにでも猫耳天使を連れて現れるぜ。パーンと!」

パーン!!
リハーサル用のシンバルが空しく響く。

「アイスは時間を守る男だ。18:00からなのに17:00になっても現れない。ちゃんと時間は伝えたんだろうな!」
「60分前に来なくても普通だろ。ああ、時間…時間…あ、24日としか書いて・・」

RQが何か言う前にリヒャルトの鉄拳が飛んだ。

「もういい!私が直接連絡を取る」
「ちょっと待てよ!これってサプライズパーティーなんだろ!」
「すべて貴様のせいだ!」


「なにかあったのか」

パーティ会場から出ようとしたリヒャルトの前に、懐かしい姿と声が現れた。

「アイス!」

RQがあわてて合図をすると、シンバルの音がパーン!と鳴り、クラッカーが弾けた。

「ようこそ、SSGの年末パーティへ!歓迎するよ、アイス!」

兎兎とDrが手をとり、アイスの周りを踊り始める。
リヒャルトはしばらく呆然としていたが、ようやく目の前の光景が現実と把握したのか

「ようこそ、アイス。年末パーティに来てくれて嬉しい」

と言って、アイスをきつくハグした。


「ちょっと待って!実はもう一つサプライズがあるんだよぉ!!」

兎兎がタンバリンを手にカーテンをさっと引くと、そこには…

「みなさん、おひさしぶりです」

白い髪、赤い瞳の青年が立っていた。
後ろには、気まずそうな人が。

「また来るとは思わなかった」
そう呟く真祐の隣で、アイオンが前髪の長い男にハグしていた。

「え!ミラー。もしかして、J&Mのミラー?」
「真祐、おひさしぶり!実はすごいサプライズなんだけど、兄さんも来てるんだよ!」

ミラーの後ろには、呆れた様子のジャンが。

「おまえを野放しにはできないだろ」

双子のトレジャーハンターJ&Mとは、月までの冒険に付き合った仲だ。
弟のミラーは変人だが、兄のジャンはこの辺りの人間関係からすれば、唯一まともと言える人物だった。野放しにしておくのが危ない連れを持っている時点で、同情以上の気持ちが芽生えたといってもいい。

真祐とジャンは、お互いに言葉もないままにポンポンと肩を叩きあった。

「おや、真祐はもう肩がこっているのかい?」

穏やかな声に振り返ってみると、そこには"いかにも肩をもんであげるよ”という表情の祐介がいた。

「なんで兄貴がここにいるんだよ!」
「私は、たまにここの相談役なんかも勤めたりしているから…」

兄は一体いくつの顔を持っているんだろう。真祐はますます不安になった。
そういえば、前にリヒャルトと祐介が連絡先を交換しているところを見てしまったではないか。
どういうわけか兄に同行しているウィリアムさんが気の毒だ。


「これはこれは、皆さんお揃いですね」

会場に入ってきた潤一の後ろには、スーパーマンのTシャツを着たアレクがいる。

「貴様は何をしにきた」

アイスの眼光がアレクを捕らえる。

「何をって!そもそもあのメールは、RQからオレ宛のものだぜ」
「うるさいっ!」

なんだかんだいって、アイスもリヒャルトに会いたかったのだろう。
久々に人間らしいアイスを見られて、アレクはそれ以上言うのをやめた。

真祐は、ぞろぞろと増えつつある人々の顔ぶれを見ながら、自分はこの場にいないほうがよさそうな気がしてきていた。

兄がハグしているあの相手は(知り合いなのか?)、顔色の悪さからして、どう見ても生きている人間には見えない。吸血鬼かと疑ってしまうのは映画の見すぎか…と思うと、隣にはドレスを着た骨格標本に向かって話しかけている医者がいる。
そっと忍び寄ってくる気配に振り返ってみると、うさ耳を構えているストロベリーブロンドのひょろりとした男がいた。
「残念!気づかれてしまったね!これはセオくん用にしよう」
男はそう言って、迷惑そうにしている学生風の男にうさ耳をかぶせようとしていた。

「なんかオレ、ここにいないほうがいい気がする…」
「何を言っているんです。真祐、世界はきみのためにあるというのに!」

いつものように出所の知れないアイオンの発言に拍手を贈るリヒャルトを見た時、真祐の心には、現実逃避という単語が浮かんだ。

「みんな、ちゅーもくーー!!」

RQの声が会場にとどろいた。

「それでは、今年の思い出を振り返るSPイベントの始まりだぜ!好きなだけ思いのたけを叫べ!!」

シャッ!とカーテンを引く音と同時に会場の明かりが消えて、スクリーンが映し出された。


「まずは1月!」



兎兎「あ、これはアイオンさんと雪だるまを作ったんだよ」
アイオン「この後、兎兎さんが箒の切れ端を持ってきて胸毛をつけたんですよね!」
潤一「おかげで私は心まで凍えそうでしたよ」
真祐「雪だるまにまで胸毛をつけようって発想が謎すぎる…」


「2月!バレンタインの季節だ」



アイオン「あ、これも僕たちです。楽しいキッチンの写真ですね」
Dr「アイオン君のご要望で、”ある生物”の内臓をショコラに混ぜたんだよね。もちろん解剖は私が担当したんだけど!」
兎兎「この時はたのしかったねぇ!私も毛深いケーキを作ったんだ!私を胸毛ごと食べて!ってイメージが斬新でしょ」
潤一「…」

「おや、潤一、元気がないぞ!次は3月だ」



リヒャルト「これは、アイスが解剖の手本を見せてくれた時のものだ」
アイス「SSGには必要な設備が整っていて満足のいく結果が出た。次もぜひ参加したい」
Dr「そりゃ、私の施設だもの。いつでも解剖しにおいで!」
セオ「たしかに勉強にはなりましたが、医大とはだいぶ雰囲気が違うな」
アレン「みんな、楽しんでいたからね。セオくんももっとリラックスすればよかったのに」
ウィル「おまえはリラックスしすぎだ」

「お次は4月!ミス.Kから伝言だ。『私の誕生月だから』…こいつ、誰だ??」



トト「二人でラブってるんだよ!ね、ジュージュ」
ジュール「幸せの図…このくらいの季節が一番好きです」
アイオン「二人でラブってるんです!ね、真祐!」
真祐「俺たちの場合、くつろいでいるだけだから…」

RQ「ところでこれは兎兎&潤一じゃないのか?」
トト「そこのところはまだ秘密なんだよ(笑)」

RQ「まぁいいか、誰にでも秘密はあるもんだ!5月」



アイオン「ああ、僕がゾンビになる挑戦をしているところですね。ミラーさんの発明品なんですよ、これは」
ミラー「”食べられればゾンビになるかもしれない植物”を作ってみたんだけど、兄さんが事務所の入り口に置くなっていうんだ。だから実験室に移したんだけど」
ジャン「客の中で行方不明者が出たら、どうするんだ!この時だって止めたのに」
真祐「結果的には、植物のほうでアイオンを吐き出したんだ。その後、枯れたとか聞いたけど」

RQ「生還おめでとう!6月」



潤一「ああ、これは私が…」

ガシャーン!

「なんだ!」
「なんだ!?」
「なにがおこった!」

謎の声「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!変態を倒せとオレを呼ぶ!
マントマン、ただいま参上!!」


ミラー「やぁ!マントマンだ」
ジャン「ミラー、あんなのと知り合いなのか。ちゃんと友達は選べって前から言っているだろう!」
トト「私たちもマントマンの番組に出演させてもらったんだよ!オカルト忍者と」
アイオン「極愛の戦士です!びしっ!」

リヒャルト「平和を愛するものには違いないが、マントが戦闘の邪魔になりはしないのか」
真祐「突っ込むところ、そこかよ!!」

マントマン「今夜はみんな楽しんでくれ!マントマンはよい子のみんなを見守っているぞ!」

RQ「これぞ本当のサプライズかもな!マントマン、気に入ったぜ!次は7月」



リヒャルト「アイスがSSGに来てくれたので、共に花火を見ている」
アイス「リヒャルトに『たまにゃー』という言葉を教わった。一般的に花火を見るときには、そう唱えるものらしい」
リヒャルト「CMでやっていたのだ。たまにゃー」
アイス「たまにゃー」

アレク「なんか俺たちって、見えない亡霊と戦っているように見えないか」
RQ「本当は踊ってるだけなのにな!オレなんか取り憑かれているみたいだ」

リヒャルト「後ろのうさ耳男は視界に入らなかった」
アイス「何者かと戦っているような男もだ」

RQ「さりげなく無視されてるが、たまにゃーなんて可愛いじゃねぇか!8月!」



潤一「ここはSSGのプライベートビーチ(予約制)です。あまりに開放的な雰囲気だったので、私はのんびり過ごしました」
RQ「あまりに開放的だったんで、ついつい脱いじまったぜ」
アイオン「あまりに開放的だったため、原住民の姿でファイヤーショーを行ってみました」
兎兎「あまりに開放的だったから、お気に入りの浮き輪をつけて跳躍してみたんだよ!」
リヒャルト「あまりに開放的だったので、本気で砂の城を製作してみた」
真祐「あまりに開放的だと思ったから、あえて普段どおりに過ごした」

RQ「おおっと、ばっちりヌードが写っていないようだな。残念。9月」



ウィル「ユウが月に移住するかもしれないと聞いて以来、不安がたえなかった」
祐介「私が月に移住しても安心だとウィルに伝えたんだよ。アイオンくんが遊びにきてくれるだろうし、地球で何かあればSSG長官さんがいる。Drが月に移住してくれたら、病気で倒れる心配もない。隣人とのもめごとがあったら、RQさんに解決してもらおうってね」
ウィル「オレが不安なのは、きみの移住後の生活ではなく…」
祐介「もう人類は火星移住計画を立てているのに、なぜ月なのかってことかい?」
ウィル「いや、そうではなく…火星移住計画などあるのか!?」
祐介「月の方がプライスダウンしていたのと、景色がよさそうだから…」

RQ「オレでよければいつでも助っ人にいくぞ。10月」



Dr「ああ、コッペリアはいつ見ても美しいね」
ラクロイ「Drとは昔なじみでね。このときはシェリーも自慢の演奏を披露してくれたし」
シェリダン「その呼び方はやめてくれマスター。演奏を自慢してなどいない」
ラクロイ「おまえは、私の賞賛を無碍にするつもりか」
シェリー「…いいえ、マスター」
ラクロイ「よろしい」
ハンター「まぁ、愛する相手が骨でもなんでも最近ではありだってわかってきた」

RQ「おおっ!愛は狂気、狂気は愛!濃い世界だ。11月」



謎の声「レディースマントマンも登場ですわ!」
マントマン「来てくれたのか!」
トト「これはね、ジュリエットさんの誕生パーティなんだよ。みんなを呼んだんだ」
ジュール「なんかいろいろ気を使った部分もあるのですが」
真祐「すみません」
アイオン「真祐は謝らなくていいです。悪いのはわかっていますから」
アイス「なんだと」
トト「まぁまぁ!すべてかっ飛ばして言っちゃうと、最後にはアレクが瀕死の重傷になっておわったじゃないか」
アレク「それって、よい解決なのか!!」
マントマン「ついでにオレも参戦!そこのチョコミントといい勝負をしたわけだ」
アイス「次は必ず仕留める」
レディースマントマン「もうみんな、おいたはいけませんよ!」

全員「はい…」

RQ「最強なのはレディースマントマンだったりして!12月」



リヒャルト「今年もいい年だった。クリスマスをおまえと迎えられたのだからな」
アイス「あの時間は充実していた。感謝する」
アレク「ひさびさにあんなリラックスしたアイスの顔を見られて、俺も幸せだ」
RQ「オレなんか幸せすぎて、バラくわえて踊っちゃってるぜ!」
アレク「二人がSSG内のリクエストで猫コスしてるのが、たまらねぇ」
RQ「二人の猫コスの前にかすむ俺たち。だが、それがいいんだ!」
アレク「あの爪でひっかかれたいとか」
RQ「それもいい!」

兎兎「会話が危なくなってきたところで、スライドショーは終わりなんだよ!みなさん楽しんでいただけたでしょうか!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これへ」
とリヒャルトが命じると、SSGの隊員が箱をもって現れた。

「このスライドをカレンダーにした。今回の参加者にプレゼントしたい。私からのせめてもの礼だ。そして、来年からもまたお互いよい年になるように。以上」

リヒャルトが言い終わると同時に、会場の扉が開かれて、SSGの隊員たちが現れた。

「SSGも、長官殿も、みなさんもよい年であるように!」

これには、リヒャルトも驚いた顔を見せた。

「おまえたち…帰ったのでは」

この時期、帰省している隊員も多いので、あえて身内だけのささやかなパーティーを計画したのだが…

「サプラーイズ!」
全員が菓子や飲み物を手に、会場に流れ込んでくる。

「うまくいったな!」
「ええ」
醒めた表情の潤一と、RQが視線を交差させた。

それからは、先ほどとはうって変わったにぎやかなパーティーとなった。


・・・・・・・・・・・・・・・


「まさか、こんなことになるとは…おまえになんといったらいいのか」

リヒャルトはどこか照れた様子で、帰路に着くアイスに呟いた。

「ラボでも、こうした予想外の事態は発生する。おまえのせいではない」

そう言われて、ほっと胸をなでおろしながら、リヒャルトはアイスに箱を差し出した。

「クリスマスの時には渡せなかった。特別な繊維で作られたコートだ。敵の銃撃程度なら防げる。しかし、おまえなら掠る事もないだろうが」
「ありがたく受け取っておく」

そして、二人は再会したときと同じようにハグした。

「よい年を」
「ああ」

言葉は短かったが、思いは伝わったようだ。

「WOOOOO!!また生きて会おうぜ!友よ!!」
「FOOOOOO!!おまえこそ死ぬんじゃねぇぞ!!」

こちらはずいぶんと騒がしかったが、思いは伝わったようだった。


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「来年はどんな年になるのかな」

皆が去って、静かになったSSGの空を見つめながら、リヒャルトは呟いた。

「いい年にきまってんだろ」

ウインクするRQから目をそらして、リヒャルトは空を見つめた。


ー本当に…みんなにとってよい年になりますようにー




かげふみさんからカレンダーをいただきました!!
かげふみさん宅のお子さんとうちのお子さんたちが入り乱れておりますので、このような運びになりました。
かげふみさん!画像&カレンダー&掲載許可をありがとうございます。

かなりリレー小説に近い気持ちで進めてしまいました~。

かげふみさんのサイトはこちらからです。

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