-ぱられるデート-

 

 

はじめに。
お遊びでパラレル設定を立ててみました。
なんと、主人公は大学生潤流ちゃん♀(誰?!)
そして、お相手は大学の先輩兎兎さん♂(なんだとっ!)

イルミーネ本編(5章)ドリー嬢との話から、一人の男性トトというものを急に書きたくなってしまいました。
受じゃない、BLでもない、トトちゃま。
はたしてどうなることやら…。
(本編にてドリー嬢とのやり取りだけを見ると、どう見ても激鈍のダメんずにしか見えないのですが・・)


そんな二人のほのぼのラブストーリーです。





「よしよし…、これ?んん、ダメ。これじゃ場所が遠すぎる!」

私は、画面を見ながら独り言をこぼしている自分に気づいた。
せっかく連休が続くのだから、なんとしてもあの人を誘い出すのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの人とは、同じ大学の先輩の兎兎さん。
兎兎さんは歴史学部、私は医学部で普段は交流がない。
彼とは学祭の時に知り合った。
オカルト研究会というサークルで、質問コーナーに座っていた兎兎さんに、私はたくさん質問を
ぶつけたのだ。私はオカルトを信じない。…けど、興味がないわけじゃない。
むしろ、中途半端に遊び半分で騒ぎ立てている番組を見ると、ちゃんと証明してみせろ!とケンカを
売りたくなる。私はなんというか…オカルトをちゃんと実証してほしいのだ。

その点、兎兎さんは鋭い質問を投げかける私に対し、少しも不快な表情を見せずに、丁寧に一つ
一つ自分が知っている範囲で答えてくれた。

「しかし、きみも詳しいね!」
しかも思いがけず嬉しそうな顔を見せた兎兎さんに、私は妙な気分になってしまったのだ。
いい加減な答え方をするようなら、言い負かせてやろうと思っていたのに。

この時、感じた“妙な気分”が好意という感情だと気づくのに、時間はかからなかった。
私は、自分からオカルト研究会に入会した。そうすれば、あの人と話ができるから。

私達は、まわり付き合うという宣言をしたわけでもないし、たぶん付き合っているわけでもないけど、
あれから、なんだかんだと一緒にいる時間が多い。
兎兎さんの私に向ける感情は、まったく不明だが、少なくとも嫌われているわけではなさそうだ。

…脈はあるのかもしれない。

そんな時だった。
兎兎さんから、連絡があったのは。

“今度のお休みにどこかに行きますか”

もしかしたら、どこかに連れて行ってくれるのかもしれない。
付き合っているわけじゃないけど、デートみたいなものだよね!
私は、すぐに“OK!OK!です!”とメールを返したが、数日間返信がなかった。
大体、それから大学で兎兎さんをみることはなかった。
もしかしたら、風邪でもひいたのかもしれない。
金曜日になっても連絡がないので、こちらから連絡をいれてみた。
すると。
“実は、数日前から風邪をひいていたようなのだが、今になってインフルエンザへと移行したらしい”
と返信が返ってきた。
“大変申し訳ないのですが、日にちを伸ばしてもらえますか?…ああ、どうしようこんなことに。
私は、本当になんと言ったらいいか…期日までに治すつもりだったのに”
私の頭の中に、高熱を出しながら携帯を手に困り果てている兎兎さんの姿が浮かんだ。
もう一度、メール文面に目を通して…不謹慎ながらプッと笑ってしまった。
彼の心中が、そのままここにある。なんと素直な人なのだろう。
まず、冷静に考えてみれば、病気を期日までに治すなんて、無茶すぎる…気力で治すという言葉は
昔からあるけれど…。きっと、ギリギリまでがんばって治すつもりだったのだろう。

“体調がよくなったら、またお声をかけてくださいね。お大事に”

そう言って返してから、2週間が過ぎた。
もちろん、すでに兎兎さんは復活し、オカルト研究会でちょくちょく見かける。
でも、妙によそよそしい。避けられている気すらする。

思い切って、メールを打ってみた。
嫌われている・・・・なら、返信は来ないだろう。

“体調は大丈夫ですか?私は、来週の日曜日以外なら空いています”

しばらくして兎兎さんから返信があった。

“ずっと気にしてました”

何を?一瞬ツッコミをいれたくなる文面。
気にしていたのなら、なおさら。なぜ連絡をくれなかったのだろう??
ここはスルーしておくのがいいだろう。
その後、日にちを指定し、兎兎さんの提案で私達はスキーに行く事になった。
“病み上がりに大丈夫なんですか?”と聞いたところ、“忘れていました”と返信が。
まったくこの人は、何度私を笑わせたら気がすむのか…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんなわけで、私はスキー場の場所を調べることにしたのである。
もちろん、兎兎さんも調べているだろうけど、あの人が調べるより私が調べたほうが早い気がする。
私がいくつかの場所をピックアップしてメールで送った後、兎兎さんから“ありがとう、そこにしよう”
と返信がきた。今までお風呂に入っていたらしく、やはり私が調べて正解だったのだ。






数日後、私達はゲレンデにいた。

「雪だ!」
「わぁ、本当に真っ白」

兎兎さんはゲレンデ…ではなく、森のほうへ向かって走っていく。
「ちょっと…まっ…」
スキー靴を履いているのに、なんであんなに軽々と走れるの?!
転びそうになりながら、私は兎兎さんの後を追いかける。

「雪だるまを、こそっと作りたくて」
兎兎さんはそう言いながら、ソフトボールの玉を二つ重ねたくらいの雪だるまを木の横に設置していた。
「私も作りたいな」
私は、もう少し小さな雪だるまを作り、その隣に置く。

2コの雪だるまは仲良しそうで、少し恥ずかしい気持ちになった。

「え?」
意外そうな声。
兎兎さんは2コの雪だるまを見つめて、目を丸くしている。
「どうかしましたか?」
「…ううん、なんでもない」
兎兎さんはそのままスタスタとゲレンデのほうへ歩いていこうとする。
だから、どうしてスキー靴でそんなにスタスタ歩けるの?!

「きゃっ!」
案の定、私は雪に片足をとられた。
ぬ、抜けない!!どうしよう!
「うっ!ふんん!!」
抜…けない!!
「と、とと…さん」

兎兎さんが振り返り、両手で、ずぼっと私の身体ごと雪の中から持ち上げてくれた。
「ち、力持ちなんですね!?」
高い高いされているような気分。
「う、うん…」
そのままゆっくりと降ろしてもらった。
「ん」
後ろに伸ばされた手。
私の手を取り、一言も言わずに兎兎さんは歩いていく。

あ、背中が見える。今まで気にした事なかったけど、こんなふうにこの人の背を見たのは初めてだ。
決して大柄ではないけれど、意外と逞しい背中に見える。
男らしいとかそういうのじゃない。
もっと…いろんなものを背負ってきたような、どこか哀愁が漂うお父さんの背中…みたいな。
と、まで言ったら言い過ぎかもしれないが、お兄さんのような。
どこかほっとする。
私にもお兄さんがいたら、こんな感じなのかもしれない。




「スキーはできる?」
「初心者レベルですけど」
ゲレンデに戻った私達。
「じゃあ、初級コースから滑ってみる?」
リフトに乗る際、こちらを気にしてくれているのがわかる。
うまく乗れた後、兎兎さんはポツリと言った。
「リフトって難しいよね。失敗したら恥ずかしいし、どうしようもない」
「もし、失敗したらすみません」
「きみじゃなくて…私は後ろにひっくり返ったことがあるんだ」
至極深刻そうな顔で、俯く兎兎さん。
「リフト止まらせてしまってね。結局、無事に上についたんだけど、まわりを見ないように滑って…」
「そんな…」
ダメだ、笑いが止まらない。そんな地の底を見るような顔で話されても。
プップッ…と何度も噴出しながら、私は答えた。
「誰でもそのくらいやってますよ!」
「ほんと?!」
「ええ」

何事もなく初心者コースについた私達は、一緒に滑り始めた。
「ゆっくり、ゆっくりだよ」
私の滑り方をみていて危ういと思ったのか、兎兎さんのアドバイスが飛ぶ。
「足はハの字。そうそう…慌てないで!」
そういう兎兎さんは、意外とうまかった。
見かけによらず、運動神経がいいのかもしれない。
「きゃっ!!」
考え事をしていたら、前のめりに転んだ。
「ああ、危ないよ。転ぶ時は横か尻餅をつくように。両足を折ってしまうよ」
兎兎さんは、さらっと怖い事を言いながら、こちらに手を伸ばす。
「ゆっくり後ろに尻餅をついて、それから立ち上がって…」
「ごめんなさい。迷惑ばかりかけて…」
「慣れてないなら、これくらいよくあることだよ。今日を練習の機会にすればいい」
「は、はい」

う。
なんか違う。
私が望んでいたのは、ゲレンデマジックみたいな展開だったはず…。
もう少し、私達が親密に仲良くなれたら…ロマンチックに…。

「ああ!板が真っ直ぐになってる。ハの字!ハの字!!」
「あ!はいっ!!」

このままじゃ、本当にスキーの特訓になってしまう…。

とりあえず一番下まで降りた後、兎兎さんは褒めてくれたんだけど。
「さぁ、うまくいったから、もう一度やってみよう!」
「・・・・はひっ!」

今日を練習の機会にって…今日中にある程度のレベルまで上げてみせると、意気込んでいるようにも
見える。
何度か初心者コースを滑った後、私は息切れをしてしまった。
意外と…厳しい特訓だった。
私は、もともと運動神経が鈍い。そんな私がとりあえずできるのがスキーだったのだけど。

「少し休憩する?」
「はぁ、はぁ…はい…」

休憩所に私を送ってから、兎兎さんは「ちょっと滑ってくる」と出て行ってしまった。
そうだよね私に付きっ切りで、自分では気持ちよく滑ってなかったから。
・・・・
しかたなく、休憩所で珈琲を飲みながら、ゲレンデを見つめる。
兎兎さんがリフトで登っていくのが見える。
どこまで行くんだろう。
ぼんやり見つめていると、兎兎さんの姿は小さくなっていく。
ずんずんと小さく…
「ちょ・・・どこまで行くの??」
あれは…超上級者コースなのでは?!
兎兎さんのかぶっている黄色の帽子が目立っているせいで、彼が急斜面の上に立っているのが
わかる。
「大丈夫なのかなぁ」

兎兎さんが滑り出した。
やっぱり上手いんだ。
ちょっと悲しくなってしまう。
私を誘ってくれたのも、私がそれなりに滑れると見込んでの事だったのかもしれない。

しかし!兎兎さんは急斜面でバランスを崩した。
「きゃーー!!兎兎さん!!」
ものすごい勢いで急斜面を転がり落ちる彼の姿。
まわりの人が私を見ているのがわかる。
「ど、どうしよう!!」
あわてて見ていると、兎兎さんは起き上がった。そして、何事もなかったかのようにまた滑り出す。
…そしてまた転ぶ。
何回か繰り返しているのを見ているうちに気づいた。
バランスを崩すたびに自ら転んでいるんだ。
それにしても…あんなにめちゃめちゃになっても滑りたいなんて。
無茶苦茶じゃないだろうか。

やがて、兎兎さんはなんでもなかったような顔で休憩所に戻ってきた。

「カロリーを消費してしまったから、おなかが空いた。お昼食べる?」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「その・・打ったところとか」
「特にないよ」
やはり、何でもない顔で、兎兎さんはフードコーナーに向かった。

「私はチーズバーガーのセット。潤流さんは?」
「私は…サンドイッチのセットかなぁ」

兎兎さんが支払いを終えて、私と自分の分の皿を持ち、席に戻ってきた。

「意外!チーズバーガー好きなんですね?」
「え、ううん。私は普段ベジタブルバーガー派なんだけど、スキー場といえばチーズだよね」
「チーズ?なんで?」
「雪とチーズ。ここはスイス…」
プッ!!サンドイッチを噴くところだった。
「なにか私はおかしい事を言ったかな?」
「…な、なんでもありません」
ふざけているわけではなさそうなところが、可笑しいのだ。
意外と兎兎さんは天然なのかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうする?もう少しスキーを練習する?それともソリで遊ぶ?」
「ソリがいいな~」
本当は、もうスキーをしたくないのだ…。足が・・・・。
絶対、明日は筋肉痛に違いない。

ソリのコースはゲレンデの片隅にある。
子供達の笑い声が聞こえてきた。

「ちょっと子供っぽいかなぁ」
と、呟く私に兎兎さんは
「そんなことないさ。ソリは誰でも好きだからね」
そう言って、ソリを一台持ってきた。

「一緒に乗ってみよう」
「え?」
「だ…ううん、別々でいいよ」
「あの…」

一瞬、兎兎さんの顔がものすごく動揺して見えて、なんと言っていいかわからなくなる。

「一緒に滑ってみましょうか?二人で滑ったら面白そう」
「うん、うん」

いつも通り、ゆったりと頷き、兎兎さんはソリを持ってソリ場を登り始めた。

「じゃあ、行くよ~~!!」
「あはは!!」
二人で小さなソリに乗る。
足で地面を蹴って。

「キャャーアハハハ!!」
「・・・」

騒いでいるのは私一人。
後ろに座っている兎兎さんは無言だ。
ひょっとして面白くないのだろうか?

「あまり面白くないですか?」
「ううん。すごく面白いけど」
「もしかして、あまり面白くないかな?」
「い、いいえ?!」

その後、別々に滑ってみてわかったことだが…
兎兎さんは、一人で滑っている時も無言だった。さらには無表情だった。
ただ、能面のような顔の中で瞳だけがいやに爛々と輝いている。
そして、滑降する直前にニヤリと薄く笑った。
人によってスリルの楽しみかたは違うということを、私はこの時に学んだのである。

そして、また兎兎さんはソリの上級コース(ただ単にソリ場の中で一番高いところ)によじ登っていった。
「危ないですよー!!」
声をかけても、フフ・・と微笑みながらかすかに振りかえるのみ。
「もう!転んでもしらないですからねー!」
下から叫ぶと、嬉しそうな顔で手を振ってくる。

そして、彼は例の無表情のままソリに乗った。
だいぶ距離のある下方を見つめて、ニヤリと笑みを浮かべる。
それも一瞬。
“無”に戻った彼は足で地面を蹴った。
すごいスピードでソリが滑ってくる。
兎兎さんはソリ紐を手綱のように操り、うまく滑って・・・・
と思ったら、バランスを崩した。

ものすごい衝撃だった。

そうとうスピードが出ていたのだろう。
彼の身体はソリから投げ出され、あらぬ方向へ飛んでいった。
ソリが空中を舞う。
まるで、スローモーションを見ているかのようだった。
私は、悲鳴をあげることもできずに、雪山の薪のように転がり落ちてくる彼の姿を目に焼き付けた。


「大変だ」
隣にいたお父さんが声を上げた。
「大丈夫かね、きみ?!」
誰かが駆け寄る。

私も雪まみれになった兎兎さんのそばに駆け寄った。

「ん、大丈夫ですよ」

何事もなかったかのような顔で、兎兎さんは起き上がった。手を確認し、頭を触っている。
「大丈夫、どこも欠けてないし、どこも打ってない」
「ああ、よかった」
そばにいた人が安堵のため息を吐いて、去っていった。

「なんでこんな危険な真似をするんですか!」
つい、私は怒鳴ってしまった。
さきほどのスキー場といい、今の状況といい、兎兎さんは無謀すぎる。
私は、今までこの人がもっと落ち着いた穏やかな人だと思っていた。

「あ、でも…」

気まずそうな顔で、座り込んだままの兎兎さんに、私は言った。

「これからは、私があなたを注意してみてますから!私のこの目がある限り、兎兎さんに
危ない行動はさせませんから!」
「う、うん」
言い切った途端、緊張が一気に解けて、しゃがみこんでしまう。
「ほ・・ほんとうに、死んじゃうかと思ったんだから・・・」
涙が出てきた。
「…ごめん、私は泣かせる気などなかったんだ…」
ゆっくりと暖かい手が背中に回された。
よくわからないまま、私は泣き続けていた。

「私は、兎兎さんが大事なんです!だから、怪我したり…危ないことをされると嫌なんです!」
「うん。わかった」
「わかっていません!私は兎兎さんのことが好きだから、こういうのに!!」
「う、うん…」
「?!」

私は今、何を言ったのだろう。
何か衝撃的な発言をしてしまったような…。

兎兎さんが困ったような顔でこちらを見ている。
「とりあえず、私は生きていた。立ち上がってもらえないだろうか」
複雑極まりない表情で、どうにか立ち上がる。
「暖かいものでも飲もう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ミルクティーの缶を手にしながら、
「私、変なことを言いましたよね」
と言ってみる。思い返したくはないが、パニックを起こした脳みそが勝手にあんな言葉を発したのだ。
私の計画では、愛の告白はもっと違うパターンで行われるはずだったのに。

「変…でもなかったよ。嬉しかったし」
兎兎さんはコーンスープを啜りながらポツリと言う。
「そ、ですか」
「私の身を心配してくれている人がいるなんて…ありがたいことだと思った」
「あ、たしかに兎兎さんの身体は心配ですが、そうではなくて!」
「ああ、もう迷惑はかけないよ」

なんて鈍い人なんだろう!
誤魔化して知らないふりをしているようにも見えない。

「私があなたを好きだと言った件についてですが」
「?!」

兎兎さんが目を見開いた。

「それはどういう意味?まさか、好きだとかそういう意味ではないよね??」

“好きだ”と言ったら好きなのだ。それ以外にどういう意味があるというのだろう。
私は、さすがに頭を抱えたくなった。
しかし、とてつもなく不安そうな表情をしている兎兎さんを見ていると憎みきれず、笑みがこぼれてしまう。

「好き…なんですけれど、言葉の意味そのままに」

なんのムードもない告白だった。
兎兎さんは大袈裟に後ずさる。
「ま・・・・待って!待ってくれ…今から私に話しかけないように!」
「私、何か悪いことを言いましたか?」
残念ボーイ…そんな言葉が頭を掠め、思わず苦笑する。
しかし、そんな彼も残念ながら私は好きだった。

コーンスープを飲みながら、兎兎さんはううんと唸って…。
「それは、私がきみを好きでも罪にはならないという事?」
「…そもそも罪にはならないと思います…」
「これから、私はどうしたらいいものか…」
「そろそろ暗くなったし、帰りましょう」

想いを伝えた途端、会話がスムーズに進むようになったのを私は感じた。
なんとなく凸凹しているけど、これはこれで面白い。
予定していたシチュエーションとまったく違うけど…。
私の頭の中では次なる計画が始まっていた。
これから二人で素敵な思い出をたくさん作ればいい。
何はともあれ、兎兎さんは私のことが好きらしい…し。


帰り際、二人で作った雪だるまが残っていた。

「私はね・・・」
と、兎兎さんが話し始める。
「潤流さんとこんなふうに二人で歩いてみたかったんだ」
どこか満足そうな横顔で。
「だから、きみが私の横に雪だるまを置いてくれて、本当に嬉しくて・・・」
キュッと、指先を握られたのを感じた。
「なんて言ったらいいかわからなくて・・いつも…今も」

兎兎さんの身体にそっと肩を寄せてみる。
きっとこの人は、今の言葉通りに、何を言ったらいいのか、どうしたらいいのかわからなくて
必死に苦悩しているのだろう。表面上あまりそう見えないけれど。
今では、この人のことが前よりは少しだけわかる気がする。

兎兎さんの手が肩に回された。

・・・と、

額に頬を寄せられ、ぎゅっとされた。

そこまでは、予想範囲外だ!
「あ、あの…私、結構ドキドキしているんですけど!」
「そうなんだ」

さらりと兎兎さんは言い、ソリで滑降する前に浮かべる笑みをその口に浮かべた。

「実は、私は、ドキドキするのがそう嫌いじゃない」
「も、もう心配かけないでくださいね!」
「うん」

兎兎さんは悪戯っぽく笑うと、そのままサクサクと歩き出す。
ちょっと!なんでそんなにサクサク進めるんですか!


ふと思い返したように、兎兎さんはこちらに手を伸ばした。
その顔は、5分前くらいよりも明らかに落ち着いていて…。

「一緒に帰ろう!」
「は、はい!」


これから、私達の物語が始まる・・・。


-END-




って、続きませんよ!(笑)

予想以上に長くなりました。兎兎さん、潤流さんがいなければ、彼は生涯彼女なしかもしれません・・・。
ちょっと心配になりました(--;)好かれてよかったね・・・。
途中で二人が元の二人になりそうな雰囲気になってしまい、あわてて軌道を戻しましたよ!
潤流さんは、アルキュード公よりも積極的ですね~。
兎兎さんは、国王陛下となんら変わらないイメージです…。