様子がいつもと違う事には、とっくに気づいていた。
だが、今ここでそれを指摘すべきでないのも知っている。
黒い軍服の下からは、甘い血の匂い。
傷口は浅い。だが、痛みを感じないわけがない。
鉄面皮の下に隠している様は、夜の姿を隠している姿にも似て…。
「一層、淫らに見える」
その声が聞こえていないふりをして、リヒャルトは自室に戻った。
任務は夜を徹して行われた。
部屋に差し込む朝日が眩しい。
「脱げよ」
背後からかけられた声に振り返る間もなく、抱きかかえられた。
「なっ!離せ!!どうしてキサマがここに?」
そのまま、出窓の淵に座らされた。
「その身体に呼ばれた」
リヒャルトのシャツは、すでに切り裂かれたような傷が見える。
「やっ!」
あっという間にシャツの前を開けられて…
「離せ…バカっ…」
「この前、印つけたところだから、よく覚えてる」
RQが傷口に舌を這わせると、リヒャルトの身体がビクリと撥ねる。
「消毒して欲しい?それとも、この上から印をつけられたい?」
「ひ…」
生暖かい感触が血を拭うように這い回る。
「一人で…できる」
「一人でするより、二人でするほうが好きだろ」
「おまえの言っていることがわからな…」
「傷より、頬と耳のほうが真っ赤になってる。思ったより重傷だ。ほっておけるわけない」
「く…」
拒絶しようにも、懐に入り込まれる感覚。
今回の敵の攻撃のような…
本来なら、受けるはずのなかった傷。
こいつに似ている…避け切れなかった。
しかし…。
こいつが私に与える傷の種類は痛みだけではない。
「あ・・」
知らず知らずのうちに、リヒャルトはRQの身体を傷に押し付けていた。
…傷の手当のはずが…。